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December 20, 2019

アンサンブル天下統一 ~ Hakuju サロン・コンサート

●19日はHakujuホールで「アンサンブル天下統一」と名付けられた弦楽三重奏。メンバーは長原幸太のヴァイオリン、鈴木康浩のヴィオラ、中木健二のチェロ。読響勢のヴァイオリンとヴィオラに、元ボルドー・アキテーヌ管弦楽団首席奏者のチェロが加わってのトリオ。アンサンブル天下統一とは、まるで戦国武将みたいなユニット名だなあ……と思っていたら、ある意味その通りで、愛知県の岡崎市シビックセンターのレジデントアンサンブルなので、岡崎といえば徳川家康ということでアンサンブル天下統一なんだとか。岡崎発で全国を制する腕達者たち。納得のネーミング。
●で、プログラムは前半はオペラ由来の編曲作品で、ビゼーによる弦楽三重奏のためのカルメン・ファンタジー、モーツァルトの「魔笛」の主題による組曲。いずれも編曲は松本望。この編曲がすごくよくできている。ヴァイオリンはもちろんのこと、チェロにもヴィオラにも見せ場があって楽しい。「カルメン・ファンタジー」はその名にふさわしく、超絶技巧で彩られる。「魔笛」ではまさかの体当たりギャグまで飛び出して、客席にどよめきと戸惑いが。後半は純然たる三重奏作品で、モーツァルトのディヴェルティメント 変ホ長調K563。キレキレでダイナミック、歌心にも富み、パッションとユーモアを兼ね備えたモーツァルト。この曲、ピアノ協奏曲第27番とかピアノ・ソナタ第16番変ロ長調、クラリネット五重奏曲など、他の早すぎた晩年の傑作群と同様に、明るい曲調であっても常に寂寥感がつきまとうのがたまらない。アンコールにバッハの「ゴルトベルク変奏曲」の弦楽三重奏版からおしまいの2曲。
●ヴィオラの雄弁さが痛快。弦楽三重奏は四重奏と違って、三人全員が主役なんだなと感じる。