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January 3, 2020

「いだてん」と国立競技場

国立競技場
●謹賀新年。本年もよろしくお願いいたします。
●録画でようやく大河ドラマ「いだてん」最終回を見たのだが、ドラマ中に登場したかつての国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)に度肝を抜かれた。あ、あれはまさにワタシが知ってる国立競技場ではないの! もう存在しないスタジアムが、あそこにある。あれはCGなのか、セットなのか。本当によくできていて一気にいろんな記憶がよみがえってきた。
●あの競技場にはほんの一部しか屋根がなかったので、雨が降れば濡れる。カッパ必須だが、雨と風と寒さが辛すぎて、途中から通路に避難して、たまに試合の様子を覗くなんてこともあった。これは裏技だが、実はスコアボードの真下のあたりに雨宿りができるわずかなスペースがあり、そこに逃れたこともある。
●Jリーグが始まる以前、トヨタカップ(欧州チャンピオン対南米チャンピオンの試合)はここで開催されており、普段はマイナースポーツのサッカーもこのときばかりは客席が埋まった。だが、当時の日本人にはサッカーの応援スタイルがなかった。だから、もっぱら静かに集中して試合を観戦していた、まるでクラシックのコンサートのように。ACミランがやってきたとき、フォワードには当時のスター・ストライカー、ジャン=ピエール・パパンがいた。コーナーキックのボールを取りに来たパパンに対して、近くにいたひとりの客が静けさに耐え切れないというかのように「ジャン=ピエール!」と叫んだ。もちろん、声はピッチに届く。パパンは片腕を挙げて軽くガッツポーズをとってくれた。世界最強チームのスーパースターに対して、だれでも一声かければ声が届く。そんな牧歌的な時代の聖地が国立競技場だった。

写真:Tokyo rose 1943 / CC BY-SA 3.0

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