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January 9, 2020

新国立劇場2020/21シーズンランナップ説明会

新国立劇場 シーズンランナップ説明会
●8日午前、新国立劇場の2020/21シーズンランナップ説明会へ。オペラ、舞踊、演劇の三部門の芸術監督がそろって会見する貴重な機会。今回から舞踊は次期舞踊芸術監督の吉田都さんが登壇。写真左より小川絵梨子演劇芸術監督、吉田都次期舞踊芸術監督、大野和士オペラ芸術監督。まず3演目共同の記者会見が開かれて、その後、部門ごとに分かれて懇談会形式で集中的に質疑応答を行ういつものスタイル。
●で、オペラ部門の2020/21シーズンランナップだが、大野体制の3期目ということで、当初の発表通り一年おきに制作される日本人の新作第2弾、およびダブルビル第2弾が新制作に含まれている。新制作は4つ。公演順にブリテン「夏の夜の夢」、藤倉大「アルマゲドンの夢」、ストラヴィンスキー「夜鳴きうぐいす」&チャイコフスキー「イオランタ」のダブルビル、ビゼー「カルメン」。
●まず「夏の夜の夢」だが、演出はデイヴィッド・マクヴィカー。指揮はイングリッシュ・ナショナル・オペラ音楽監督を務めるマーティン・ブラビンス。というか、日本では名フィル元常任指揮者と言ったほうが通りがいいかも。なお、これはモネ劇場のプロダクションを新国立劇場で購入したもの(ケントリッジ演出の「魔笛」と同様のケース)。
●日本人新作は藤倉大「アルマゲドンの夢」。大野さんが「現代に通じるテーマを持った作品を」とリクエストしたところ、藤倉さんが選んだのは、なんと、H.G.ウェルズ原作の短編。ウェルズといえばSF小説の始祖のような存在だが、「マーラーやリヒャルト・シュトラウスの同時代人」と紹介されていて、なるほど。この「アルマゲドンの夢」は従来の邦訳では「世界最終戦争の夢」と題されていると思う。昔は「アルマゲドン」なんていう言葉は日本語では通用しなかったから、「世界最終戦争」と翻訳されていたんだろう。台本はこれまでの藤倉作品で共同制作が多いハリー・ロス。演出はリディア・シュタイアーで、「問題意識の掘り起こし方の深さに定評がある」。英語台本で藤倉大作品ということで、国際的に発信力のある作品になりそう。藤倉大のオペラといえば、以前、東京芸術劇場で「ソラリス」が演奏会形式で上演されたのを思い出すが、「ソラリス」の原作はスタニスワフ・レム。レムの原作はSFの枠を超えた世界文学の名作として広まっているが、今回のウェルズの原作はSFの枠のなかでも歴史に埋もれつつある古い小説。レムに比べると台本や演出で創意を発揮する余地が大いにあるんじゃないだろうか。ちなみにこの作品、もうできあがっているんだとか。オーケストラは三管編成、合唱も入るそうなので、「ソラリス」よりもずっと大きな編成の作品になる模様。
●ダブルビルは「夜鳴きうぐいす」と「イオランタ」。童話オペラを並べていると同時に、以前から大野さんが言っていたロシア・オペラのレパートリーの蓄積もできるという一石二鳥の二本立て。「夜鳴きうぐいす」は「ストラヴィンスキーの作風の変化がひとつの作品に内包されている大変な傑作」。
●「カルメン」の演出はアレックス・オリエ。「トゥーランドット」での大胆解釈が物議をかもしたというか、むしろ物議をかもしきれなかったきらいがあるのだが、さて「カルメン」はどうだろう。「トゥーランドット」での前例を考えると、「だったらカルメンがホセを返り討ちにするのかな」「それとも心中しちゃう?」「案外ふたりとも生き残ったりして」など、いろんな期待を呼ぶ。なお、大野監督は「アルマゲドンの夢」と「カルメン」の2演目を指揮する。