January 24, 2020

エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団&庄司紗矢香

東京芸術劇場前のグローバルリング
●23日は池袋の東京芸術劇場でエサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団。チェロのトゥルルス・モルクが肺炎のため来日中止になり、当初予定されていたサロネン自作のチェロ協奏曲が、シベリウスのヴァイオリン協奏曲に変更。ソリストは庄司紗矢香。前半はラヴェルの組曲「クープランの墓」と、そのシベリウスのヴァイオリン協奏曲。庄司紗矢香のソロにただただ圧倒される。鮮やかなテクニック、音色の豊麗さ、雄弁さ、説得力に満ちていて、おまけに音が驚くほど強くて太い。オーケストラがかなり鳴らしているのに、強靭な音がギュンギュンと客席まで飛んでくる。サロネンの自作曲が聴けなくなったのは残念だったが、まさか曲目変更でこんな名演に出会えるとは。ソリスト・アンコールにパガニーニの「うつろな心」による序奏と変奏曲より。これがまたすごい。あまりに滑らかで、微塵も難度を感じさせない。
●後半はストラヴィンスキーの「春の祭典」。この曲は以前、同じコンビでも聴いているが、断然今回のほうが突き刺さった。フィルハーモニア管弦楽団、公演ごとに波のあるオーケストラという印象だが、これはもうすっかり手の内に入ったレパートリーで、会心の一撃が出た感。パワフルで鮮度マックス、キレッキレのハルサイ。アクセルを踏みっぱなしでコーナーを走り抜けてゆくかのような快感(ゲーセン的なイメージで)。冒頭ファゴットソロの荒ぶる感、第1部「大地の踊り」の爆発的なクライマックス、第2部序奏のトランペットの極端なミュートなど、細部までデザインされた鋼のストラヴィンスキー。最近のオーケストラ公演ではいつもそうだが、ホールの反響板がオルガンを隠す形で降ろされていてステージ上の空間がコンパクトになっていて、轟音が空間を飽和させて窮屈に感じるほど。客席は大いに沸きあがったのだが、サロネンは3回くらいのカーテンコールでさっさとコンサートマスターを引き連れて退出して、解散を促すのが吉。すぐに客席の熱が冷めるはずもなく、サロネンのソロ・カーテンコールが2回あって、盛大なブラボー。テレビ収録あり。
●芸劇の地下で VRサウンド・ステージTokyo というイベントが開催されていた。これはサロネンとフィルハーモニア管弦楽団によるマーラーの交響曲第3番の終盤5分間を、VRヘッドセットとヘッドフォンを装着して、あたかもステージ上にいるかのように体験できるというもの。

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