June 25, 2020

映画「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」(テリー・ギリアム監督)


●都内でも上映館が少なくあっという間に終わってしまった映画「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」(テリー・ギリアム監督)だが、やっとAmazonのprime videoで見ることができた。原題は「ドン・キホーテを殺した男」(本来この題で呼ばれるべき作品)。テリー・ギリアムは長年にわたりドン・キホーテの映画化を試みてきたものの、そのたびに数々の災難が降りかかり、企画は暗礁に乗り上げていた。一度はジョニー・デップ主演で撮影開始にまでたどり着くも、悪天候や役者の体調不良、保険を巡る経済的問題などで途中で制作中止に追い込まれてしまう。その様子はドキュメンタリー映画「ロスト・イン・ラマンチャ」に描かれており、これ自体、テリー・ギリアムの生々しい苦悩を描いた作品として一見の価値がある。で、月日は流れ、テリー・ギリアム(1940年生まれ)もすっかり老いてしまった……と思っていたら、なんと、今年、ついに映画「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」として公開されたんである。主演はアダム・ドライバー。そう、「スター・ウォーズ」悪夢の最新シリーズでカイロ・レン役を務め、先日のジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画「デッド・ドント・ダイ」にも出ていた彼だ! もしこれで「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」が駄作だったら、ワタシはアダム・ドライバーの駄作三連発を見ることになってしまう。だが、もちろん、そうはならない。これはまぎれもなく傑作だ。あの「未来世紀ブラジル」の、そして「モンティ・パイソン」のテリー・ギリアムにふさわしい名作が誕生した。
●で、これはもう徹頭徹尾テリー・ギリアム的な映画で、思い切っていってしまえば「未来世紀ブラジル」と同じことを言っている。夢と現実、正気と狂気、聖女と娼婦といった二項対立に加えて、「過去との対峙」というテーマが加わっているのが印象的。ちなみに「未来世紀ブラジル」で主人公の役人を演じていたジョナサン・プライスが、この映画では老いたドン・キホーテとして帰還している。アップデイトされた「未来世紀ブラジル」、年輪を重ねた「未来世紀ブラジル」といってもいいかもしれない。ワタシは最後の場面に声を上げて笑ったし、ウルッと来た。

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