September 23, 2020

東京芸術劇場で広上淳一指揮N響

●18日は池袋の東京芸術劇場でN響9月公演。今シーズンのN響は従来の定期公演を休止して、代わりに同日・同会場で新たな主催公演を開催するという方式で開幕している。この日は当初予定されていたパーヴォ・ヤルヴィに代わって広上淳一が登場。ゲスト・コンサートマスターに白井圭。会場はNHKホールではなく東京芸術劇場。これはNHK放送センターの建替工事とNHKホールの改修工事に伴う変更として以前から決まっていたこと。ここでN響を聴くのはかなり新鮮というか、初めてかも。芸劇好きとしては歓迎。
●プログラムはウェーベルンの緩徐楽章(ジェラード・シュウォーツ編の弦楽合奏版)、リヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」からの六重奏(弦楽合奏版)と組曲「町人貴族」。ウイルス禍の副産物として、このところどの楽団でも編成を絞った曲や弦楽器のみの曲が多くなっていて、結果として新味のあるプログラムが増えている。逆に言えば管楽器奏者によっては出番が極端に少なくなっていて、それはそれで大変そう。ウェーベルンの緩徐楽章は後期ロマン派のスタイルで書かれた官能的な音楽。濃密で耽美。シェーンベルクは無調や十二音技法で名を残しながら実際にみんなが好んで聴くのは「浄夜」や「グレの歌」という皮肉な現象があるが、ウェーベルンでもこの曲や「夏の風のなかで」で似たようなことになるのかもと思わなくもない。休憩なしで、シュトラウス作品が続く。「町人貴族」は愉快。元ネタになじみがないのでネタのわからないギャグを聞いている感はあるのだが、アンサンブルの喜びは伝わってくる。ソロの活躍の場が満載。ウェーベルンがロマンティックで、シュトラウスがクラシカルという組合せの妙。
●客席は一席空けなのだが、再開後の公演のなかでも目立って空席が多かった。いろんな理由はあるだろうが、池袋という新しい会場に移ったことも大きな要因か。客層が普段のN響定期とは違うようで、だいぶ若めの印象。常時なら新しいお客さんの開拓の余地が大いにありそう。この日もオーケストラ入場時に拍手あり。人は少なくても、客席に熱はあったと思う。

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