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September 28, 2020

ボンクリ・フェス 2020

ボンクリ 2020●26日は東京芸術劇場でボンクリ・フェス 2020。「世界中の新しい音が聴ける1dayフェス」と謳った音楽祭で、作曲家藤倉大がアーティスティック・ディレクターを務める。「ボンクリ」とはBorn Creativeの略で、つまり「人はみな生まれつきクリエイティブ」という意味。生まれたときはクリエイティブなんだけど、大人になるとどんどんフツーの人になってしまう。でも大人になっても子供のクリエイティビティを失っていない人、それがアーティストであり、そんな人たちの音楽を聴こうというフェス。東京芸術劇場のコンサートホールやアトリウム、アトリエイースト&ウエスト、リハーサルルームなど館内に8つの会場が置かれ、それぞれでコンサートやワークショップなど、さまざまな企画が用意される。多くの企画は子供も参加可能、とはいえ時節柄、家族連れより大人のひとり客が目立ったかな。
●メイン企画となるのはコンサートホールでのスペシャル・コンサート。藤倉大 Gliding Wings(日本初演)、八木美知依「水晶の夢」、ハイナー・ゲッベルス「サロゲイト ピアノと打楽器、声のための」(日本初演)、牛島安希子 Distorted Melody(日本初演)、蒲池愛&永見竜生[Nagie] 「between water and ray グラスハープとライブエレクトロニクスのための」、休憩をはさんで大友良英「みらい 老いては子に従え バージョン」(世界初演)、坂本龍一「パサージュ」(日本初演)、藤倉大 Longing from afar ライブ版(世界初演)。演奏者はアンサンブル・ノマドをはじめ多岐にわたる。それぞれまったく方向性の違う作品で、とても楽しめた作品からまったくピンとこない曲までまちまちだが、圧倒的にインパクトが大きかったのは大友良英作品。3歳くらいから小学校高学年くらいの子供たちが一人ずつ登場して、アンサンブル・ノマドの前に立つ。子供たちがいろいろなアクションをすると、それにノマドのメンバーが敏感に反応して運動を音として表現する。一種、原初の指揮行為とでもいうべきか。辣腕奏者たちの存在が大前提だが、子供たちの動きがおもしろすぎる。子供は幼いほど独創的で、成長するにつれ大人の発想に近くなるという原則を再確認する。そして、みんな最高にかわいい。最後の藤倉大作品は作曲者本人がロンドンの自宅からリモートで演奏に参加。
●このスペシャルコンサート以外にも行きたい場所はたくさんあったのだが、都合でアトリエイースト&ウエストの「電子音楽の部屋」と、リハーサルルームの「大友良英の部屋」のみ参加。どちらも入退室自由で、ぶらっと入って、好きなだけ録音を聴いて、ぶらっと出ていくことができる。これがいいんだ。「電子音楽の部屋」とか入り浸りたくなる。ただみんなで黙って録音を聴いているだけなんだけど、奇妙なくらい心地いい。そういう意味ではコンサートホールで夜に開かれた「大人ボンクリ」も楽しかったはずなんだけど、時間が合わず。
●このフェスって、今の音楽、同時代の音楽のお祭りなんだけど、決して「現代音楽」という言葉を使わない。わかる。