November 25, 2020

鈴木優人指揮読響&村治佳織のロドリーゴ、ベートーヴェン

サントリーホールのツリー
●24日はサントリーホールで鈴木優人指揮読響。ホール入口脇の滝にツリーが立っていた。今年のクリスマスはどうなるのか、世界的ウイルス禍でサンタさんは活動を自粛するのか、いっそ春に延期してはどうか……などと思いつつ臨んだプログラムは、ベートーヴェンの序曲「レオノーレ」第3番、ロドリーゴの「ある貴紳のための幻想曲」(村治佳織)、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。そういえば今年はベートーヴェン・イヤーでもあったのだ。最初のオーケストラ入場時の拍手はまばら。演奏会の雰囲気は非常時から日常へ回帰しつつある一方、東京の感染者数は急激に増加しており、難しい局面に入ってきた。弦は対向配置、指揮棒あり。
●「レオノーレ」第3番はドラマティック。大臣の到着を告げる舞台裏のトランペット、2度目はかなり近くで朗々と鳴って、いよいよ目の前までやってきたという感。コーダに突入するヴァイオリンのスピード感あふれるパッセージは、最初は少人数で始めてだんだん人数が増えていく劇的仕様。スペインの刑務所から政治犯が解放されるハッピーエンドに続いて、ロドリーゴを聴くというスペインつながりなのか。「ある貴紳のための幻想曲」はガスパル・サンスの楽曲を題材に用いた擬古的なギター協奏曲。録音ではよく「アランフェス協奏曲」とカップリングされる曲だけど、実演で聴く機会は多くない。「貴紳」っていう言葉、この曲で知ったようなものだけど、原語はgentilhombre、英題だとあっけなくgentleman。名訳。ギターはPAありで、自然なバランス。心地よく聴き入る。第2楽章「エスパニョレータとナポリ騎兵隊のファンファーレ」がシチリアーノで始まるのだが、レスピーギの「リュートのための古風なアリアと舞曲」を連想せずにはいられない。古楽の再創造という点でストラヴィンスキー「プルチネッラ」らと似たようなことをやっているはずなのだが、手触りはぜんぜん違って、素朴な温かみがある。アンコールは村治さんが曲名を告げて、大定番のタレガ「アルハンブラの思い出」。
●後半はベートーヴェンに戻って気迫のこもった「運命」。管楽器や打楽器にいくぶん重心が傾き、金管の強奏もあって剛悍な趣。終楽章のリピートありがうれしい。あの流れをぶった切るようなリピートは、第1楽章のオーボエの小カデンツァと並ぶこの曲の快感ポイント。喝采の後は念入りな分散退場で密を避ける。

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「トロールの森 2020」です。

次の記事は「waist-up dressing」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ