December 14, 2020

ベルリン・フィルのDCH 20/21シーズンからミンコフスキ、ラハフ・シャニ他

●ベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホール(DCH)で今シーズンの演奏会をいくつか拾い聴き。演奏会を丸ごと聴こうとすると、まとまった時間が必要になり結局聴けずじまいになりがちなので、アーカイブを聴くときには曲単位で興味のあるものを選ぶことにしようと思いつく。以下、ほぼ自分メモ。
●久々にベルリン・フィルに登場したマルク・ミンコフスキのプログラムがおもしろい。ハイドンの交響曲第59番「火」(火事)とベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」を組みわせた「火」プログラム。ハイドンは日本語の定訳はより具体的に「火事」だけど、ドイツ語だとFeuersinfonieなので「火」つながりが明確に。「プロメテウスの創造物」全曲はなかなか聴けないが、本来ならベートーヴェン・イヤーでもっと注目される機会があったのかも。ベルリン・フィルはアクセルを少し踏んだだけでぶっ飛ぶスポーツカーのよう。夾雑物がなく目の詰まったサウンドで、分解能が高い。ミンコフスキという以上にベルリン・フィルのベートーヴェンを聴いた感。
●イスラエルの指揮者ラハフ・シャニとピアニストのピエモンテージがともにベルリン・フィル・デビュー。ラハフ・シャニ、日本で読響を指揮した際は聴き逃したが、1989年生まれで、メータの後を継いでイスラエル・フィルの音楽監督に就任したそう。しかもピアニストでもある。ワーナーミュージックの紹介文によれば2007年にピアニストとしてイスラエル・フィルにデビューしていながら、2010年にコントラバス奏者として同オーケストラに入団して、その後2013年に指揮デビューしたという異例のキャリアを持つ才人。プログラムはピエモンテージとのモーツァルトのピアノ協奏曲第27番、シューマンの交響曲第1番「春」。指揮ぶりは融通無碍、確信をもってベルリン・フィルをリードする。巨匠風の大きな音楽を作る人のようで、流麗なベルリン・フィルにゴツゴツとした手触りをもたらす。ただし、より印象に残ったのはピエモンテージのピアノ。クリアで硬質な音色としなやかな歌いまわしの妙。表現意欲にあふれているが、過剰に至らないバランス感。
●キリル・ペトレンコがアンドリュー・ノーマンの「サビーナ」(弦楽合奏のための編曲版)を指揮していた。意外と楽しそうな指揮ぶり。グラミー賞の「サステイン」もそうだったけど、耳に心地よい陶酔的な音楽。

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