February 9, 2021

マンダロリアン / スター・ウォーズ

●ルーカスフィルム製作の評判の実写ドラマシリーズ「マンダロリアン」をようやく見ている。これが抜群におもしろい。舞台設定は「スター・ウォーズ」エピソード6「ジェダイの帰還」の5年後。主役はアーマーを身にまとった賞金稼ぎ、マンダロリアン。ダース・ベイダーが倒れ、帝国崩壊後に訪れた混乱の時代を、孤独な戦士マンダロリアンが民族の掟を背負って生き抜く。
●基本的に「連ドラ」なので、本編の「スター・ウォーズ」のような壮大なスケールの話ではないのだが、近年の映画版「スター・ウォーズ」よりも、こちらのほうがよほど「スター・ウォーズ」らしいと思ってしまった。もうエピソード7から9までの最新三部作は、自分の心のなかではなかったことにする。あれは偽史。代わって「マンダロリアン」こそ、本来の「スター・ウォーズ」正史と認めたい。
●なんでそうなったんだろ。もともと「スター・ウォーズ」って、神話を時代劇/西部劇の文法で描いた話だと思うんすよ。だから、主人公はどんなに大勢の敵に囲まれても不死身だし、大けがもしない。宇宙船はダメージをくらっても墜落しない。本物の宇宙船なんて部品ひとつにまちがいがあっただけでも落ちかねないのに、「スター・ウォーズ」の世界ではパイロットが「これは修理が大変だ~」とかぼやきながら、バーナーで溶接して宇宙船を直しちゃう。ご都合主義が大手を振るって歩いている。だって時代劇だから。もともと「ジェダイ」の語源は「時代劇」。当初ジョージ・ルーカスはオビ=ワン・ケノビ役を三船敏郎にオファーしたが断られたというのは第1作公開時から言われている有名な話。その分、痛快なストーリー展開や奇抜なアイディアなど、思い切り羽を伸ばす余地があるのが「スター・ウォーズ」だったはず。なのに最新三部作ではファンの期待が手枷足枷となったのか、いかにも不自由でセルフパロディ的で、そのくせ広げた風呂敷を場当たり的な解決でしか畳めなかった。でも「マンダロリアン」はのびのびしている。レトロテイストなメカもクリーチャーも「スター・ウォーズ」らしい。起承転結もきちんとしている。ユーモアも上質。ああ、このテイストで本編も作れていたら。そう思わずにはいられない。

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