March 4, 2021

SOMPO美術館 FACE展2021

●2日、新国立劇場の記者発表でせっかく初台まで来たので、会見後に新宿のSOMPO美術館に寄って「FACE展2021」(~3月7日)。損保ジャパン本社ビルにあった東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館が、昨年、隣接した新美術館に移り、新たに「SOMPO美術館」として開館。独立した建物になって、ぐっとアクセスしやすい雰囲気に。明るくてきれいで居心地のよい空間。
●で、FACE展というのは新進作家による公募コンクールとして開催されるもので、今回で9回目になるそう。1193名の応募から、入選作品83点(受賞作品9点を含む)が選ばれている。おもしろいのは観覧者投票による「オーディエンス賞」があるところで、すさまじく幅広い作風の力作たちからたった一点を選ぶというミッションが課せられていると思うと、がぜん、見る側も楽しくなる。実際にちゃんと投票してきた。
●まったく多種多様な作品群ではあるんだけど、全体を大きくとらえて感じる要素を3つ挙げるとすると、ヴィヴィッド、ポップ、ダークサイド、かな。壁面がパッと鮮烈でいかにも楽しげだけど、ディテールには心がざわざわするような暗い要素が潜んでいる、という傾向。以下、自分が特にいいな!と思ったものを挙げる。写真OKの展覧会ってすばらしい。写真は自分へのお土産。

山本亜由夢「パライソ」
●山本亜由夢「パライソ」。審査員特別賞受賞作のひとつ。半ば南国的な楽園のようであり、半ば不穏なディストピアを示唆するようでもあり。絶妙の色調から物事の二面性を読みとる。

フカミエリ「夜につれられて。」
●フカミエリ「夜につれられて。」。これも鮮やかな色調だが、自分の分類では「怖い絵」。獣たちの策略に引っかかりそうな男。森の奥が妖しい。題に句点が含まれているのは編集者泣かせ。

原真吾「デリバリさん」
●原真吾「デリバリさん」。なんともいえないイジワルなユーモアが漂っている。中央に宝石のように煌めくハンバーガーが鎮座。その周囲を回っている自転車乗りはUber Eatsかと思いきや、ランドセルを背負った小学生たち。マスクをしてうつむき加減。通学路の日常とデリバリーサービスを結びつけるとは。

多田耕二「橋と時空」
●多田耕二「橋と時空」。この橋はなぜか強烈なノスタルジーを喚起する。これに似た橋はあそこにもあそこにもある。どこにでもありそうなんだけど、圧倒的に力強い。間近で見ると鋼の表面のざらりとした質感が気持ちよさげ。弓なりの部分を上っててっぺんまで行ったら怖そう……と想像してしまうのは、遠い木登りの記憶がそうさせるのか。

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