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September 27, 2021

バッハ・コレギウム・ジャパンのベートーヴェン「オリーブ山のキリスト」

●26日は東京オペラシティでバッハ・コレギウム・ジャパン定期演奏会。今回はオール・ベートーヴェン・プログラムで、「静かな海と楽しい航海」、交響曲第2番、オラトリオ「オリーブ山のキリスト」。鈴木雅明指揮、中江早希(ソプラノ)、鈴木准(テノール)、加耒徹(バス)。オーケストラには名手がそろっている。コンサートマスター寺神戸亮、第2ヴァイオリンのトップに若松夏美、ホルンには福川伸陽、トロンボーンに清水真弓、ティンパニに久保昌一の名も。前半もすばらしいのだが、なんといっても後半「オリーブ山のキリスト」を聴けたのがうれしい。
●ベートーヴェン生前の成功作であり、作曲者本人も重要作と認識していたはずの曲が、現代ではほぼ演奏されない曲になっているという謎。一応、録音では聴いたことがあるにせよ、今回初めて真正面から向き合うことができた。台本はマタイ受難曲らと同様、キリストの受難を扱っているのだが、ストーリー性は薄く、一場面を拡大してイエスの心情にフォーカスしたといった感。ユダの裏切りの場面もない。イエスというか、ほとんど個人の苦悩に普遍化できるような祈りの音楽といった手触り。そして、イエスがテノールであるというところもそうなんだけど、オペラ的とも感じる(ペテロがバス。ソプラノはセラフィムという役どころでそんな登場人物必要なのかなと思うが、声楽的には勘所)。後の「フィデリオ」を予告しているところも多々あって、最後は輝かしい勝利の合唱で盛大に終わる(これから十字架にかけられるのでは)。台本に引っかかるところがあっても、最後は音楽の偉大な力ですべてを解決してしまうあたりも「フィデリオ」的。
●客席は盛況で、おなじみの分散退場。分散退場があるとわかっていると、拍手の途中に早々に席を立つ人が増えるのだが、なるべく分散するという本来の意図には適っている。拍手が鳴りやまず、指揮者のソロカーテンコールに。