October 22, 2021

大野和士指揮東京都交響楽団のシュトラウス、ツェムリンスキー

●20日は東京芸術劇場で大野和士指揮都響。平日昼間の公演で、前半にリヒャルト・シュトラウスの交響詩「死と変容」、ツェムリンスキーの「メーテルリンクの詩による6つの歌」op13(藤村実穂子)、後半にシュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」。当初の予定ではツェムリンスキーのオペラ「フィレンツェの悲劇」演奏会形式が予定されていたのだが、海外勢が来日できず、このプログラムに。これはこれで楽しみなプログラム。
●冒頭、9月30日に世を去った作曲家すぎやまこういちを追悼して、交響組曲「ドラゴンクエストII」よりレクイエムが献奏された。ドラクエII、自分は最後までプレイしているが、この曲はどんな場面で演奏されたんだっけ……。というか、当時のファミコンはピコピコ音だったわけで、このような格調高い弦楽合奏による演奏とは別世界。しかし当時から作曲者の頭の中にあったのはオーケストラのサウンドであったはず。すぎやまこういちの音楽がなかったら、ドラクエはまったく別のゲームになっていただろう。それはジョン・ウィリアムズ抜きの「スター・ウォーズ」みたいなもの。改めてその功績を偲ぶ。自然と拍手なしの演奏になった。
●偶然ではあるが、レクイエムからシュトラウスの「死と変容」が続くのはテーマ的に自然な流れ。ついシュトラウスの交響詩の物語性にゲーム音楽的な要素を探し出してしまう。続くツェムリンスキーでは藤村実穂子の歌唱が圧巻。後期ロマン派の爛熟した世界へ。オルガンの手前のかなり高い場所に字幕が吊り下げられていて、最初は気づかず。なじみの薄い作品なので、この字幕はありがたかった。そしてプログラムノートに掲載されていた対訳がなんと藤村実穂子訳。これは稀有なパターン。「ツァラトゥストラはかく語りき」では舞台いっぱいに奏者が広がっており、指揮者がいったんステージを降りて客席側を通って指揮台に上ることになった。この曲を聴けばキューブリック監督による進化SF映画の古典的傑作「2001年宇宙の旅」を思い出さずにはいられないのだが、スペクタクル志向とは一線を画した質実なスタイル。渋めだが熱気が渦巻く。
●あ、ドラクエ2のレクイエムって、パーティ全滅時の音楽なんだっけ? だとしたら何度も聴いているはずだけど、おそらく音楽が鳴るやいなや指がリセットボタンに伸びていたかと。

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