January 7, 2022

ベルリン・フィルDCHでスピノジとペトレンコ

●ベルリン・フィルのデジタルコンサートホール(DCH)を観たメモ。ジャン=クリストフ・スピノジ指揮でバロック~古典派プログラム。フィリップ・ジャルスキーのカウンターテナーが聴きものではあるのだが、スピノジのハイドン「熊」とモーツァルト「ジュピター」がぶっ飛んでいた。緩急のつけ方が大胆でおもしろすぎる。スピノジもすごく楽しそうに指揮をしていて、自分のギャグに自分でウケているかのよう。「熊」終楽章でニセのエンディングを演出するのだが、観客はまるで引っかからない。苦笑するスピノジ。しかも最後は本当に終わってるのに客が拍手を躊躇してしまう。爆笑。「ジュピター」も同様で、たとえば冒頭部分は強奏の後、休符を長めにとって、ぐっとテンポを落として弱奏部分を続ける。対比効果は強烈だが、この調子でずっと続けるので、奏者も客も白ける危険はあるとは思う。ときに飛び出す極端なテンポ操作。天下のベルリン・フィルをこれだけぶんぶん振り回すのだから大したもの。指揮者一人旅にならないかとはらはらしてしまうが、スリリングな「ジュピター」にお客さんは大喝采。屈指の楽しさ。
●もうひとつ、キリル・ペトレンコ指揮のファミリーコンサート「火の鳥」にも目を見張った。こちらは教育プログラムということで無料公開されている。「火の鳥」の物語はファミリー層にぴったりだと思うが、これをただナレーションでストーリー紹介するだけでは芸がないわけで、そこはさすがベルリン・フィル、ライブペインティングと「火の鳥」役のバレエダンサーを加えるという子供たちにも興味の持てる演出になっていた。特にスクリーン上に映し出されるライブペインティングは効果的。次々と「火の鳥」名場面が描かれていく。ただ絵を映すだけだと説明にしかならないけど、今そこで描かれている絵は体験の共有。物語に対するナレーションの説明は最小限にして、トークは楽器紹介など音楽面に力点を置いている。ちゃんとペトレンコがしゃべる。そしてベルリン・フィルが演奏する。なんというぜいたく。

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「積雪10センチメートル」です。

次の記事は「東京芸術劇場コンサート・オペラ vol.8 プーランク「人間の声」&ビゼー「アルルの女」」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ