January 19, 2022

岩川光(ケーナ) 東京オペラシティ B→C バッハからコンテンポラリーへ

●18日は東京オペラシティのリサイタルホールでB→C、ケーナ奏者の岩川光のリサイタル。珍しい楽器だが(シリーズ初登場なんだとか)、プログラムはまさしくB→Cらしい選曲で、バロックから世界初演曲までずらり。すべて無伴奏。前半がマルセロ・トレド「息/皺」(1998)、武満徹「エア」、バッハ「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番」よりアルマンド、コレンテ、サラバンド、ジグ、ビーバー「ロザリオのソナタ」からパッサカリア、後半がドビュッシー「シランクス」、岩川光「ハチャケナ」(2017)、ブリテン「オウィディウスによる6つの変容」、キケ・シネシ「夢のような3つの風景」(2021、岩川光委嘱作品、世界初演)、マルセロ・トレド「化身の時線」(2021、岩川光委嘱作品、世界初演)、ピアソラ「6つのタンゴ・エチュード」から第3番、第4番、第6番。
●ケーナは自分にとってまったくなじみのない楽器で、ぼんやりと南米の民族楽器なのかなくらいにしか思っていなかったが、強烈な印象を残す公演だった。楽器としてはアンデスなど南米山地に分布するエアリード式の縦笛ということで、尺八に近い印象。オーケストラの西洋楽器とはまた別のニュアンスに富んだ表情を持ち、フレーズのひとつひとつに玄妙さが備わる。加えて、今回のプログラムは特殊奏法が満載。特に初演作品のトレド「化身の時線」は特殊奏法のみの作品。全体に発声しながら吹く奏法も頻出。前半の自作曲で出てきた管尻を足でふさぐ奏法は尺八でも見たことがある。楽器の表現力は高い。
●もっとも通常のBtoCであれば現代曲の高度な技巧性に引き付けられるところだが、ケーナの場合はむしろ古典のほうが挑戦的なレパートリーだとも感じる。原曲がフルートやヴァイオリン、オーボエだったりするわけだが、バッハのジグのようなヴァイオリンのすばやいパッセージの連続をこの楽器で演奏する様子はほとんど超越的というか、崇高さを感じずにはいられない。ビーバーの「パッサカリア」も寂寞とした音色もあいまって、そびえ立つ岩壁のような険しく巨大な音楽として差し出される。自分にとって前半のハイライトはビーバー、後半はトレド「化身の時線」か。最後のピアソラは実質アンコール的な位置づけかと思ったらそうではなく、ちゃんとアンコールがあった。リカルド・カペジャーノ「貧しきもの、弱きものたちへの賛歌」。息の長いフレーズに余韻を味わう。


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