May 20, 2022

新国立劇場 グルック「オルフェオとエウリディーチェ」新制作

新国立劇場
●19日は新国立劇場でグルック「オルフェオとエウリディーチェ」新制作。勅使川原三郎の演出・振付・美術・衣裳・照明、劇場デビューとなる鈴木優人の指揮。ピットには東京フィル。登場人物の少ないオペラなので独唱は3人のみ。ローレンス・ザッゾのオルフェオ、ヴァルダ・ウィルソンのエウリディーチェ、三宅理恵のアモーレ。これにダンスが加わるのが今回の演出の特徴で、ダンサーは佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ、高橋慈生、佐藤静佳。特に前半の第1幕と第2幕はダンスの役割が非常に大きい。ダンス、歌唱、オーケストラ、見る角度によっていずれもが主役となりうるけど、やっぱりダンスあってのプロダクションなんだと思う。舞台はきわめて簡素。ポスターにもあしらわれているユリの花がモチーフ。
●ONTOMOの「神話と音楽Who's Who」でも書いたけど、本来、神話上のオルフェオとエウリディーチェは悲劇で終わるのに対して、グルックのオペラではアモーレがちゃぶ台を返してハッピーエンドで決着する。当時のオペラとしてはやむをえないにしても、現代人の感性からするとこれではドラマが壊れてしまう。で、そこは台本上しっかり書き込まれているので動かせないところではあるんだけど、それでも最後は含みを持たせる終わり方になっていた(と解釈した)。
●描写性に富み、雄弁なオーケストラが聴きもの。鈴木優人が珍しく指揮棒を持って登場。モダン・オーケストラながらも語り口豊かで古楽テイスト十分。
●この物語、神話だから許されるのかもしれないんだけど、落ち着かない話ではあるんすよね。男はちゃんと事情を理解しているんだけど、女は状況が飲み込めずに感情的にふるまって計画を台無しにする。客席でそわそわするパターンだ。METのマシュー・オーコインの新作が「エウリディーチェ」と題されていて、神話を妻の側の視点から描くって聞いたとき、「だよなあ」と思ったもの。でも、そっちはせっかくMETライブビューイングで上映してくれたのにタイミングが合わずに見損ねてしまったのだった……。

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