May 27, 2022

上岡敏之指揮読響のツェムリンスキー「人魚姫」他

●24日の夜はサントリーホールで上岡敏之指揮読響。ウェーベルンの「6つの小品」作品6(1928年版)、ベルクの歌劇「ヴォツェック」から3つの断章、ツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」という20世紀ウィーン・プログラム。上岡は約6年半ぶりに読響に登場。当日の昼、新日フィルの次期音楽監督の記者会見があった後、夜にその前音楽監督が指揮する読響の演奏会を聴くという奇遇。
●「ヴォツェック」から3つの断章では、ソプラノの森谷真理、TOKYO FM少年合唱団が共演。この作品自体、本編であるオペラの上演の目処が立たないことから、先んじて演奏会用の組曲として編まれたということで、一種の「予告編」的な性格を感じさせる。本編のムードというか、エッセンスをギュッと凝縮。歌手が不在のまま演奏が始まって「あれ?」と思ったら、途中からステージ奥に登場、分厚い管弦楽を突き抜けてまろやかな声を響かせる。予想外にドラマ仕立てで、最後の場面では少年たちが登場するのだが、これが日本語台詞だったのであまりの生々しさにドキリ(「ホップ、ホップ」はそのまま)。背筋の凍る怖さ。
●ツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」は濃密で雄弁。「人魚姫」というストーリーそのものが本来暗くて救いのない話なので、「ヴォツェック」とはつながっている。その暗鬱さが後期ロマン派仕様の豊麗な管弦楽で容赦なく描かれる。第1楽章の波打つようなリズム、船の航海を思わせる前進する楽想、そしてヒロインを表すヴァイオリンのソロ。これはダークサイドの「シェエラザード」なのだ。第2楽章はワーグナー「指環」を連想させる。軽くチャイコフスキーも入っているかも。第3楽章はリヒャルト・シュトラウス風か。でも総体としては紛れもなくオリジナリティを持ったツェムリンスキーの音楽。幕切れの後は、客席に完璧な静寂が訪れて、それから盛大な拍手。拍手が鳴りやまずソロカーテンコールあり。

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