June 8, 2022

カーチュン・ウォン指揮日本フィルの伊福部&マーラー[配信]

●どうしても日程が合わず聴き逃してしまったカーチュン・ウォン指揮日本フィルの演奏会をテレビマンユニオンのネット配信で堪能。こうして後日にオンデマンドで聴けるのは本当にありがたい。5月28日、サントリーホールの公演で、プログラムは伊福部昭のピアノと管絃楽のための「リトミカ・オスティナータ」(ピアノ:務川慧悟)、マーラーの交響曲第4番(ソプラノ:三宅理恵)。カーチュンは日本フィル次期首席指揮者(記者会見参照)。
●伊福部昭「リトミカ・オスティナータ」はソロ、オーケストラともに熱量があって快演。務川慧悟のソロは切れ味鋭く、かつ強靭な打鍵。土臭さよりも一段階洗練された今っぽいカッコよさを感じる。ゴジラがシン・ゴジラ化する時代のシン伊福部かも。ソリストアンコールにフォーレの即興曲第2番。優美。直前の伊福部とは別世界でギャップがすごい。
●マーラーはかなり彫りの深い表現で、はっきりとカーチュン印が刻印されていたと思う。前回のマーラー5番でもそうだったが、濃厚な音楽ではあるけど、爛熟したロマンティシズムよりもむしろポジティブなエネルギーの発散を感じる。オーケストラも緻密で、彩度と透明度高めのサウンド。情感豊かな第3楽章が白眉か。第4楽章は三宅理恵の軽く清澄な声が、この曲の無垢なイメージにぴったり。カーチュンは大きな身振りの指揮だが、むやみに煽らずていねいなのがいい。曲が終わった後は完璧な沈黙。拍手が鳴りやまず、カーチュンのソロ・カーテンコールあり。
●このテレビマンユニオンの配信サービスは以前にも使ったことがあって、クオリティは大変すばらしい。PCからUSB-DACに出力してヘッドフォンで聴いているが、生々しくくっきりとしたサウンドで、ある意味、客席で聴くよりも臨場感があるというか(オーディオとはみんなそういうものだが)。カメラワークも自然で、音楽に集中できる。オンデマンドでしか使っていないが、ストリーミングもスムーズ。ただし不満もあって、自分の購入履歴が確認できないのはどうかと思う(メニューを探したが見当たらない。マイプレイリストはあるが、それは購入履歴ではない)。それと、サービス名称は「Member's TVU CHANNEL」でいいのだろうか。名前が長いので、呼びやすい略称がほしくなる。

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