August 10, 2022

東京オペラシティアートギャラリー「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」

「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」展示風景
●東京オペラシティアートギャラリーで「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」展が開催中(~9/19)。当初、2021年に開催が予定されていたが、コロナ禍により延期になっていた。延期になった海外アーティスト系企画が遅れて続々と開催される様子は音楽界と似たようなものか。パッと見、白と黒のモノトーン基調で気取った雰囲気に思えるが、機知に富んだ作品が並んでいて、かなり愉快。各作品のそばに説明はないので、入口で配布されるパンフは必読。展覧会全体の大まかなテーマは「時間」。
ライアン・ガンダー 「脇役」
●「ふーっ」といくぶんくたびれた様子で座っている女性がいる。作品の題は「脇役(タイーサ、ペリクルーズ 第5幕第3場)」(2022)。少し離れた場所には立っている男性もいて、そちらは「脇役(パルタザール、ヴェニスの商人 第3幕第4場)」。これらはリハーサルの舞台裏で出番を待つ脇役の姿。出番よりも待っている時間のほうがずっと長いといったところだろうか。等身大のグラファイト製の彫刻。
ライアン・ガンダー 「僕は大阪に戻らないだろう」
●あっ、壁の穴から5000円札がはみ出てる! しかもこれがゴソゴソと動くのだ。題は「僕は大阪に戻らないだろう」(2017)。なぜ大阪なのか。お札は本物に見えるのだが、だれも盗る人はいないのかと心配になる。奥にネズミがいるからお札が動いている、らしい。別の場所にやはり壁穴があって、ネズミが動いている作品がある(しかもしゃべる)。機会仕掛けの作品はいくつもある。ほかにJavaScriptのコードらしきものがプレートに刻まれた作品も。
ライアン・ガンダー 「ばらばらになった自然のしるし」
●これは月。題は「ばらばらになった自然のしるし(大多数は立ちすくんで気もそぞろに月を見つめる中、少数派は怒りに駆られてしるしを描く)」(2022)。パンデミックで移動ができない中、スタジオで目にした満月が描かれている。ゴミ箱の底に絵具を押し当ててプリントしたものだとか。月は一部ばらばらになっている。
ライアン・ガンダー 「最初の殉教者(乖離する物語)」
●ふと壁の下を見たら金庫の絵がある。「最初の殉教者(乖離する物語)」(2019)。ピカソの「青の時代」のスタイルで描かれているのだとか。無一文だった頃のピカソが、買えなかった家具の絵を壁に直接描いたという逸話があり、そこには貴重品をしまうための架空の金庫が含まれていたそう。かなり可笑しい。
●時間の都合もあり一部の作品を見逃してしまったので、期間中にもう一度、足を運ぶつもり。ここはコンサートホールに足を運ぶ際に、合わせて寄ることがほとんど。東京オペラシティArts友の会に入っていれば、会員特典で無料で入れる。なんてお得なの。

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