August 9, 2022

尾高忠明指揮大阪フィル フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022

ミューザ川崎
●5日夜はフェスタサマーミューザKAWASAKIで、尾高忠明指揮大阪フィル。配信ではなくリアルで。近年、同音楽祭は地方からゲストオーケストラを招いており、今年は大フィル。尾高忠明音楽監督たっての希望による参加だったとか。プログラムはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(イリヤ・ラシュコフスキー)とエルガーの交響曲第1番。これはもう大成功が約束されていると言ってもよい鉄板プログラム。特にエルガーはマエストロの十八番。
●イリヤ・ラシュコフスキーは数日前に小川典子との2台ピアノを配信で聴いたばかりだが、この日も鮮烈。高い技巧と強靭な打鍵を持ち、音色が常に澄んでいて爽快。濃厚なラフマニノフではなく、むしろスマートで粘らないのが吉。オーケストラも充実。 ソリスト・アンコールにスクリャービンの練習曲「悲愴」op8-12。浜松国際ピアノコンクール優勝をはじめ、とてもたくさんのコンクールの上位入賞歴を持つ人でもある。しかし彼はロシア人。今後のキャリアはどうなるのだろう。
●伝家の宝刀、エルガーの交響曲第1番は冒頭から情感豊か。全体としてはノーブルさよりも重厚さを強く感じる。大きなドラマが築かれて、これで充足できたが、アンコールにダメ押しのようにエルガー「威風堂々」第1番。一段と盛り上げてくれた。ところで、開演前のトークは聴けなかったのだが、マエストロからエルガーの交響曲とブルックナーの類似性について話があったらしい。ああ、なるほどなあと思う。そういえばこの日、休憩中の男性側トイレの行列がずいぶん長かった気がする(←そこかよっ!)。行列はともかく、たしかにブルックナーの交響曲にある神秘的な恍惚感に近い(でも少し違う)なにかがエルガーにもある。で、待てよ、最近、別の指揮者から似たような話を聞かなかったっけ……と記憶の糸をたぐって思い出した。サイモン・ラトルだ。ラトルもロンドン交響楽団のオンライン記者会見でエルガーの交響曲について話していたぞ。そう、たしかこんなふうに。「エルガーがもしウィーンに生まれていたら、きっとマーラーになっていたでしょう」。あっ! ブルックナーじゃなくてマーラーだった! すごい、エルガー! ブルックナーにもなれるしマーラーにもなれる!! スーパー・シンフォニストだっ!

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