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September 21, 2022

セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響の「ドイツ・レクイエム」

●20日はサントリーホールでセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響。前半にダニエル・シュニーダー作曲の「聖ヨハネの黙示録」日本初演、後半にブラームスの「ドイツ・レクイエム」という宗教音楽プロ。ソプラノにファン・スミ、バリトンに大西宇宙、新国立劇場合唱団の声楽陣。
●前半のダニエル・シュニーダー、未知の曲なのでブラームスの前座くらいに思っていたら、ぜんぜんそうではなく30分あるがっつりした曲で、声楽陣も入る。前後半とも歌いっぱなしの新国立劇場合唱団がこの日の主役といってもいいくらい。シュニーダーはスイス生まれのアメリカで活動する作曲家で、「聖ヨハネの黙示録」(2000)はミルウォーキー交響楽団の委嘱作なのだとか。であれば、晦渋な現代曲ではなく、楽しい曲なんじゃないかなと予想していたら、期待通りのおもしろさで、ブラームスとはまったく対照的。さまざまなスタイルが渾然一体となっていて、無理やりたとえるならオルフ「カルミナ・ブラーナ」の聖俗をひっくり返してブリテンとジョン・ウィリアムズとハンス・ジマーを掛け合わせたみたいな感じ? 歌詞に「悪魔の数字は666」とか出てきて、一瞬「エクソシスト」かよ!と心のなかでツッコミを入れてしまったが、それを言うなら「オーメン」だ(ダミアン……)。最後はゆったりとした心地よい南国的なリズムに乗ってカリビアンな気分で終わる。
●後半の「ドイツ・レクイエム」はヴァイグレの本領発揮。合唱団は約60名程度、P席に市松模様の散開配置なので、響きの密度という点では難しさもあったと思うが、澄明な歌唱でこの作品ならではの鈍色のロマンティシズムを存分に伝えてくれた。独唱陣もきわめて高水準で、もっと出番が欲しいほど。この曲、レクイエムではあるけれど、自分にとってはかなり早くから好きになった曲なので、宗教曲ゆえの疎外感よりも懐かしさを伴って聴ける曲。この渋いカッコよさは微妙に中二病的ななにかを刺激する。フーガ成分高めだからなのか。第2曲は後の交響曲第1番第1楽章を先取りしていると感じる。全般に漂う「モテない」感にカッコよさの源泉があると思うのだが。曲が終わると完全な静寂が訪れ、長い長い余韻を味わった後に拍手。