December 13, 2022

セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響のチャイコフスキー&タネーエフ

●12日はサントリーホールでセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番(反田恭平)とタネーエフの交響曲第4番という渋いプログラムながらチケットは早々と完売。反田さんのおかげで、タネーエフの交響曲第4番を満席のお客さんが聴くという現象が実現。すごい!
●チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番、まったく聴く機会がないわけではないが(過去にユジャ・ワン、ベレゾフスキーで聴いたと思う)、第1番に比べると極端に演奏頻度が少ないので貴重。第1楽章冒頭や第3楽章は十分キャッチーだと思うのだが、特に第1楽章が長くて構成感がつかみにくいのが不人気の理由だろうか。第1楽章のカデンツァが立派。第2楽章がピアノそっちのけでヴァイオリンとチェロの二重奏で開始される。これを聴くとブラームスのピアノ協奏曲第2番の第3楽章がチェロのソロで始まるのを連想するわけなんだけど、チャイコフスキーが1880年完成で1882年初演、ブラームスが1881年完成&初演で地理的条件も考慮すると、どちらかがどちらかの影響を受けたわけではなさそう。偶然なのか。第3楽章はとりわけ華やかで、ソリストとオーケストラが一体となって圧倒的な高揚感を生み出していた。長い協奏曲だったからなのか、ソリスト・アンコールはなし。
●後半、タネーエフの交響曲第4番は録音でも聴いたことがなく、今回初めて聴く曲。堂々たる三管編成から重厚で骨太の響きが聞こえてくる。大枠では師匠チャイコフスキーばりの交響曲なのだが、師よりも少しアカデミックな作風と言うのかな。構築感と抒情性を両立している立派な作品なんだけど、師と違うのは臆面もないロマンティックなメロディが決して出てこないということ。これだけの筆力があるなら、民謡由来のわかりやすいメロディをひとつふたつ導入すればレパートリーに定着する人気曲になったかもしれないのに……と思わなくもないが、作曲家としてはそんなつもりはさらさらないといったところか。第2楽章のおしまいでヴァイオリンのソロが出てくるのはブラームスの交響曲第1番の同楽章を連想させる。第4楽章の終盤でティンパニのロールでいったん曲を区切って輝かしいフィナーレへ向かうあたりはチャイコフスキー風味。幕切れは豪快。日頃聴けない曲を充実した演奏で聴けて満足度の高い公演だった。
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●宣伝を。小学館のファッション誌 Precious 2023年1月号にまたもや寄稿。Precious ChoiceのMusicの1ページで、今回はお正月らしくシュトラウス・ファミリーの話題。毎回言ってるけど、この雑誌、広告ページにびっくりで、コートが143万円、ワンピースが23万円、ブーツが35万円みたいな価格帯で、ワタシのような庶民が原稿を書いててすみませんって感じだ。価格帯だけ見れば高級オーディオ雑誌に近い世界。