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March 20, 2023

佐藤俊介指揮東京交響楽団のシュポア、ベートーヴェン、メンデルスゾーン

佐藤俊介 東京交響楽団 水谷晃 大野雄太
●サントリーホールで佐藤俊介のヴァイオリンと指揮で東京交響楽団を聴く。このコンビ、前回は都合が合わず悔しい思いをしたのだが、ようやく聴けた。前半にシュポアのヴァイオリン協奏曲第8番イ短調op.47「劇唱の形式で」、ベートーヴェンの交響曲第1番、後半にメンデルスゾーンの弦楽のための交響曲第8番ニ長調(管弦楽版)。シュポアは弾き振りで、独奏ヴァイオリンとオーケストラのためのオペラみたいな曲。プリマドンナ化する独奏ヴァイオリン。なにかふさわしい物語を脳内補完したくなる。ベートーヴェンはこれまでに聴いた同曲のもっともエキサイティングな演奏。テンポが自在に伸縮し、場面場面でとても表情豊か。この曲、こんなに雄弁で物語的な音楽だったのかと初めて気づいた気分。しかもベートーヴェンでもまさかの弾き振り。第1楽章が終わったところで、あまりにすばらしすぎて拍手したくなったほどだが、実際に少しだけ客席から拍手が出た。ピリオド聴法の実践だ。トランペット、ホルン、ティンパニはピリオド仕様。チャーミングかつヴィヴィッド。
●メンデルスゾーンは若き日の弦楽のための交響曲を作曲者自身がオーケストラ用に編曲した版で、編成はベートーヴェンの1番と同じ、楽章構成もほぼ同じような感じ。コントラバスを両翼に二分割して配置していた。ベートーヴェンと似た曲だなあと思わせておいて、第4楽章はモーツァルト「ジュピター」ばりにフーガになるのだが、風呂敷は広げるよりも畳むほうが難しいものだとも思った……が、原曲作曲時にメンデルスゾーンが13歳だったと気づいて愕然。
●カーテンコール時に、今月末で退団するコンサートマスター水谷晃、首席ホルンの大野雄太の両氏に盛大な拍手。心温まる光景。東響はほかに首席オーボエ奏者の荒木奏美、もうひとりの首席ホルン奏者ジョナサン・ハミル、首席ハープ奏者の景山梨乃の三氏も今月末で退団する(→退団のお知らせ)。だいぶ顔ぶれが変わる。