March 30, 2023

東京・春・音楽祭2023 「東博でバッハ」 徳永真一郎(ギター)

東博 法隆寺宝物館
●今週はコンサートラッシュ。キリンチャレンジカップのニッポンvsコロンビア戦とか、フェスタミューザKAWASAKI2023の記者会見の話題も書きたいのだが、そちらは来週に改めることにして、29日は東京・春・音楽祭2023のミュージアム・コンサート「東博でバッハ vol.61 徳永真一郎(ギター)」。東京国立博物館で開かれる「東博でバッハ」には会場が2種類あって、ひとつは法隆寺宝物館エントランスホール、もうひとつは平成館ラウンジ。建築物として趣のあるのは後者だが、音楽会の会場としては前者が好き。この公演は前者。法隆寺宝物館の細長いエントランスホールを縦長に使ってステージと客席を配置する。天井も高く、まるでシューボックス型コンサートホールの縮小版みたいな環境ができあがる。
●この日は徳永真一郎のギターで、バッハ作品とバッハに触発された作品が並ぶプログラム。バッハ~D.ラッセル編の「目覚めよと呼ぶ声あり」で幕を開け、タンスマンのギターのためのインヴェンション「バッハ讃歌」、バッハの「前奏曲、フーガとアレグロ」ニ長調BWV998、休憩をはさんで武満徹「フォリオス」、バッハのリュート組曲第3番イ短調BWV995。わりと「BtoC」味があるプログラムで、凛としたギターの音色を満喫。タンスマンは初めて聴いたけど、本当にバッハのインヴェンション風味。武満徹「フォリオス」は第3曲に「マタイ受難曲」からの引用がある。この日の白眉か。バッハのリュート組曲第3番は無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調が原曲。新鮮な味わい。アンコールにはヴィラ=ロボスの5つの前奏曲より第3番「バッハへの賛歌」。ヴィラ=ロボスといえば「ブラジル風バッハ」だが、こんな曲もあったのか。
東博 黒門
●演奏会は19時開演なので、東博はすでに閉まっている。正門からは入れず、左に回って黒門から入場することになる。法隆寺宝物館での公演のそそるポイントのひとつは、壁を一つ隔てた向こう側に法隆寺の宝物があり、おびただしい数の金銅仏がずらりと並んでいるというシチュエーション。飛鳥時代、6世紀から8世紀の観音菩薩立像やら如来立像が密集する隣で、バッハを聴くという対比の妙。18世紀のバッハって相対的には新しい文化なんだなと感じる。もちろん、展示室は閉まっているのだが、帰りがけに東博の総合文化展の招待券をもらえる。後日、日を改めて見に来てね、というメッセージを受け取る。