April 12, 2023

佐渡裕指揮新日本フィルのラフマニノフ、シュトラウス

佐渡裕指揮新日本フィル
●10日はサントリーホールで佐渡裕指揮新日本フィル。佐渡裕が新音楽監督に就任して、これがシーズン開幕の公演となる(4月スタートなのだ)。ソリストに辻井伸行を迎え、チケットは完売。場内は活気がある。サントリーホールでチケットが完売すること自体はぜんぜん珍しくないが、明らかにふだんと違うタイプの賑わいがあった。年配の方も若い方もいるんだけど、人に動きがあるというか、好奇心が高まっているというか。ふだんのオケ定期とはなにか雰囲気が違う。
●開演時に佐渡さんがマイクを持って登場して軽くトーク。これも在京オーケストラの定期公演では見慣れない光景だが、よく考えてみたら開幕公演でもあるのだから、本来これくらいのホスピタリティがあって当然なのかもしれない。もちろんトークは抜群にうまい。
●プログラムはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(辻井伸行)とリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」。辻井伸行にとってのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、優勝したヴァン・クライバーン・コンクールのファイナル以来の縁の深い作品でもあり、佐渡裕とのコンビでレコーディングもある鉄板のレパートリー。集中度の高い演奏で、過度な感情表現に溺れない純度の高いまっすぐなラフマニノフ。盛大な拍手にこたえて、ソリスト・アンコールにカプースチンの8つのエチュード第1曲「前奏曲」。最近カプースチンに意欲的に取り組んでいる模様。
●後半のシュトラウス「アルプス交響曲」は期待を上回る名演。これからの佐渡&新日フィル・コンビへの期待を大いに高めてくれた。大編成の作品だが、スペクタクルに傾かず、ていねいに練られている。金管セクションが決して荒っぽく咆哮せず、楽器間のバランスを絶妙に保ちながら、弦楽器をベースとした壮麗な響きを作り出す。充実のアルプス登山。この公演を絶対に成功させようという使命感みたいなものも伝わってくる。これは指揮者のソロカーテンコールまであるはずと思ったが、そうならなかったのは少々意外。
●つい先日、受難節コンサートでBCJの「マタイ受難曲」を聴いたばかりなんだけど、その直後にニーチェ「アンチクリスト」由来の「アルプス交響曲」を聴く奇遇……と思ったら、今週末のパーヴォ&N響も「アルプス交響曲」を演奏するのだった。