April 25, 2023

クシシュトフ・ウルバンスキ指揮東京交響楽団の「シン・新世界より」

クシシュトフ・ウルバンスキ指揮東京交響楽団
●23日は東京オペラシティでクシシュトフ・ウルバンスキ指揮東京交響楽団。プログラムはメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲、ショパンのピアノ協奏曲第2番(ヤン・リシエツキ)、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。東響の宣伝文句に「シン・新世界」と書いてあったのがおかしい。たしかにウルバンスキなら「シン」を付けてもいいかもしれない。
●リシエツキは東京・春・音楽祭に続いての登場。ウルバンスキも相変わらずスラッとしていてカッコいいのだが、リシエツキはさらに長身痩躯。きわめて強靭なタッチの持ち主だと思うが、むしろ弱音表現に重きを置いたようなショパンで、ダイナミックレンジは非常に広い。なおかつ音色も多彩で、白眉は第2楽章。オーケストラも合わせるだけではなく、伸縮自在のテンポでかなり新鮮。第3楽章、オーケストラの総奏の出だしが聴いたことのないような柔らかい表現でびっくり。ポーランド人(系)のふたりがこれだけ独自色の強いショパンを演奏してくれるのも吉。ソリスト・アンコールにショパンのノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)。
●後半は期待以上に新しい「シン・新世界より」。この曲、あまりに名曲すぎて「ここでタメが入る」等の「型」ができあがっていると思うが、いったんそれをご破算にして作品に向き合おうというのがウルバンスキの基本姿勢。冒頭の序奏はかなり速めのテンポで、主部とのコントラストを付けすぎない。第2楽章、あまりに有名なイングリッシュホルンのメロディは3階席から降ってくる(客席からはどこに奏者がいるのか見えなくて、終演後にわかった)。同楽章、休符で音楽が止まるところはうんと長く。終楽章も爆走するばかりではない柔軟さ。この曲にかぎらず、ウルバンスキの音楽は息が長いというか、アレグロであっても深呼吸しながら走るみたいなところがある。民俗舞曲の意匠を借りて蒸気機関車を表現するのがこの曲の本質だと信じているのだが、ウルバンスキが振ると、ある種、スチームパンク的なレトロな斬新さを感じる。盛大な拍手が続いて、ウルバンスキのソロカーテンコール。ブラボーとスタンディングオベーション。
●「シン・仮面ライダー」はまだ観てない。「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」は映画館で観たが、「ライダー」はどんなもんでしょうね。