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May 10, 2023

クリストフ・エッシェンバッハ指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、佐藤晴真

●9日は東京オペラシティでクリストフ・エッシェンバッハ指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団。プログラムはウェーバーの「魔弾の射手」序曲、ドヴォルザークのチェロ協奏曲(佐藤晴真)、ブラームスの交響曲第2番。ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団は旧東独のベルリン交響楽団が2006年に現在の名に改称した楽団。2019/20シーズンからエッシェンバッハが首席指揮者を務めている。第1コンサートマスターに日下紗矢子。期待して足を運んだけど、期待以上のすばらしさで、オーケストラの深みのある濃いサウンドを堪能。といっても昔風の暗くて重い響きというわけではなく、むしろ弦は明るく輝かしい。機能性よりも、響きの豊かさに魅了される。
●前半、ドヴォルザークのチェロ協奏曲は佐藤晴真との共演。たっぷりとしたヴィブラートで楽器を鳴らすが、音楽は清冽でスマート。農村的な土の香りではなく、整備された都会の自然公園で目にする新緑といった趣。ソリスト・アンコールはカタルーニャ民謡~カザルス編の「鳥の歌」。後半、ブラームスの交響曲第2番はエッシェンバッハとこのオーケストラの相性の良さが伝わってくる名演。エッシェンバッハはこれまでいろんなオーケストラと来日しているし、N響への客演も多いんだけど、しばしば音楽の自然な流れに抗うように軋みをもたらして作品の核心に迫るようなところがあって、それが魅力でもありハラハラするところでもあったりする。でもこのオーケストラとは以心伝心といった様子で、フレーズの終わりで大きくテンポを遅くするような場面でも無理なく棒についてくる。すっかりレパートリーとして手の内に入っているようでいて、決して予定調和的ではなく、進むにつれて熱を帯びてフィナーレは壮麗。アンコールにブラームスのハンガリー舞曲第1番。
●来日オーケストラということもあるんだろうけど、盛大なブラボーが出て、客席はわいていた。ブラボー禁止時代も昔話か。カーテンコール後、さっと帰る人と残る人に二分されて、エッシェンバッハのソロ・カーテンコールとスタンディングオベーションに。83歳とは信じられない壮健さ。