amazon
December 13, 2023

映画「ゴジラ-1.0」(山崎貴監督)

●自分の周囲ではとても話題になっている映画「ゴジラ-1.0」(山崎貴監督)。賛否両論なのだが、ゴジラの場面はよい、という点ではみんな一致している。で、自分もようやく映画館で観た。そうだなー。ひどい話だと思ったけど、ゴジラが出ている場面は100点満点。この凶悪さ、恐ろしさ。たいへんすばらしい。肝の場面で流れる伊福部昭の音楽も鳥肌もの。
●基本設定も秀逸。初代ゴジラより時代設定を前にしていて、まだ戦時中の時点で話が始まる。主人公は特攻隊の生き残り。つまり、ゴジラ映画では必須と思われていた自衛隊がまだ存在しない。なるほど、そう設定すれば日本軍とゴジラが戦えるのか。ただ、話がはじまるとすぐに終戦して、敗戦国となった日本がどうやってゴジラと立ち向かうのかという話になって、どういうわけか民間主導でゴジラと戦おうということになる。
●話はもう本当にわけがわからない。ご都合主義が大手を振るって歩いているし(パニックになった銀座でヒロインと主人公がばったり出会う場面に声が出そうになった)、登場人物は自分の心情を独り言として声に出して説明するし、すぐに叫んだり泣いたりするし、行動原理も思考回路も謎すぎてヒトの人生を送ってる感がなさすぎるし、「こういう展開になったらヤだな~」と思ったほうに展開していく。まあ、ディズニー以降の「スター・ウォーズ」もだいたいこんな感じだったから、今はしょうがないのかな……。
●でも、ゴジラが出ている場面は最高だ。地上のシーンも海のシーンもすばらしい。あと、ゴジラと戦うための「わだつみ作戦」、一見荒唐無稽に見えて実はSF的なロジックが通っていて、このアイディアはスマートだと思った。ゴジラに災害のメタファーを背負わせるのもいいんだけど、こういう空想的なサイエンスの要素があったほうが、がぜん盛り上がる。ゴジラが登場する前に深海魚が浮くシーンも伏線になってるし。あ、そう考えると本当によくできている。「オレの戦争を終わらせる」的な耐えがたい人間ドラマ以外はすべてにおいて大傑作なのでは。