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December 18, 2023

ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団のマーラー「一千人の交響曲」

ファビオ・ルイージ NHK交響楽団 マーラー「一千人の交響曲」
●16日はNHKホールでファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団。N響第2000回定期を記念して、ファン投票で決まった曲目がこのマーラーの交響曲第8番「一千人の交響曲」。三択で対抗馬にフランツ・シュミットのオラトリオ「7つの封印の書」、シューマンのオラトリオ「楽園とペリ」があったわけだが、予想通りマーラーが過半数の票を獲得した次第。ちなみに第2000回定期が「一千人の交響曲」なら、第1000回定期はなんだったのかといえば、1986年、サヴァリッシュ指揮のメンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」だった(第1000回だから「一千人の交響曲」というわけではなくて)。奇しくもサヴァリッシュはルイージのメンター。N響を通して師弟の縁が思わぬ形で結ばれた。
●演奏が始まる前の緊張感がすごかった。最初の一音が出る前、客席の集中度が異様に高まっていて、固唾をのんで待っている様子が伝わってくる。演奏は祝祭性をことさら強調したものではなく正攻法で、壮麗でありながらも端正。合唱は新国立劇場合唱団とNHK東京児童合唱団で最強の布陣。児童合唱に胸キュン。2階Rエリアに金管のバンダが配置されていて、突然の立体音響にびっくり。独唱陣はソプラノにジャクリン・ワーグナー、ヴァレンティーナ・ファルカシュ、三宅理恵、アルトにオレシア・ペトロヴァ、カトリオーナ・モリソン、テノールにミヒャエル・シャーデ、バリトンにルーク・ストリフ、バスにダーヴィッド・シュテフェンス。合唱団の前に立って歌った。最後のソプラノはオルガン席から。
●ぐいぐいと進む一気呵成の第1部に比べると、この曲、第2部は親しみづらいなと思う。第1部は4楽章制交響曲のアレグロ楽章みたいにして聴けるけど、第2部をアダージョ、スケルツォ、フィナーレとして飲み込もうと思っても、なんだかすっきりしない。で、テキストがゲーテの「ファウスト」第2部だっていっても、もうメインのストーリーは終わってて、エンディングの情景だけが描かれている。なんというか、試合はすでに決着がついてて、最後のヒーロー・インタビューでひとりずつ「今の心境は?」って尋ねているみたいな感じ。テキストへの共感がない自分がここで疎外感を味わうのはしょうがないんだけど、おしまいは音楽の高揚感だけで胸がいっぱいになる。
●そういえば、ピアノがこんなにはっきりと目立った演奏は記憶にないかも。この曲はオルガン、ピアノ、チェレスタ、ハルモニウム全部乗せという鍵盤楽器交響曲でもあった。