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December 20, 2023

ほのカルテット リサイタル 大阪国際室内楽コンクール2023弦楽四重奏部門第2位記念

●19日はサントリーホールのブルーローズ(小ホール)で、ほのカルテット。サントリーホール室内楽アカデミー第7期生、ほのカルテットが大阪国際室内楽コンクール2023で弦楽四重奏部門第2位を獲得したことを記念して開催された公演。メンバーは第1ヴァイオリンが岸本萌乃加(ほのか、なので「ほのカルテット」)、第2ヴァイオリンが林周雅、ヴィオラが長田健志、チェロが蟹江慶行。めちゃくちゃうまいメンバーがそろっているのだが、岸本は読響第1ヴァイオリン、林は「題名のない音楽会」の「題名プロ塾」でデビューしてジャンル無用で活躍中、長田は反田恭平率いるジャパン・ナショナル・オーケストラのメンバー、蟹江は東響のメンバーといった具合で、活動拠点はまちまち。なのだが、全員が東京芸大在学中の結成という間柄で、しかもチェロ以外の3人はみんな「佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ」卒業生という関西勢。
●プログラムは前半にハイドンの弦楽四重奏曲第38番変ホ長調「冗談」とベートーヴェンの弦楽四重奏曲第12番変ホ長調、後半にメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第4番ホ短調(当初発表からベートーヴェンとメンデルスゾーンの曲順が入れ替わった)。ハイドンの「冗談」は曲のおしまいが「終わったと思わせて終わってない」という、交響曲第90番と同様のジョークが仕込まれている楽しい曲。サントリーホールのブルーローズのお客さんともなると、だれも騙されて拍手をしてくれないわけだが、それでも演出はしっかり利いていて効果抜群。この部分だけではなく、作品全体にあるユーモアの要素が伝わってくる。ベートーヴェンは練り上げられた表現で、切れ味鋭く鮮やか。思い切りのよい振幅の大きな表現で、聴きごたえ大。ほかの後期作品も聴きたくなる。メンデルスゾーンがおそらくこのカルテットの真骨頂。パッションが豊かでスリリング。曲順を変更した理由はいくつも考えられるけど、おしまいに置いたことで聴く側の意識がメンデルスゾーンにフォーカスすることはたしか。
●後半に入る前にがっつりとトークが入った。林周雅さん中心に4人でマイクを回すのだが、このトークがおそろしいほどうまくて、楽しいムードになる。客席の心をガッツリつかんでいた。でも、少し長すぎたか。アンコールもふるっていた。まずはエベーヌ弦楽四重奏団編曲による映画「パルプ・フィクション」より「Misirlou」。これがクレイジーでカッコいい。その後、さらに長田さんがマイクをもって話しながら、そのまま三木たかし(多井千洋編曲)「津軽海峡・冬景色」へ。トークが歌の「前口上」になっていたという昭和歌謡仕様の演出で爆笑。カモメの鳴き声まで入ってる。このノリには度肝を抜かれた。ハイドンのジョークで始まって、現代のジョークで終わったということか。全員のスケジュールを合わせるのが大変そうな団体だけど、これからの活動が楽しみ。

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