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February 9, 2024

クァルテット・インテグラのハイドン、ジョン・ゾーン、ベートーヴェン

●8日はHakuju Hallへ。第170回リクライニング・コンサートにクァルテット・インテグラが登場。休憩なしの短時間プログラムで1日2公演開催する方式。19時半開演の夜の部へ。2015年に結成され、2022年にARDミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門で第2位を獲得するなど、今、大注目のカルテット。メンバーは三澤響果、菊野凛太郎(ヴァイオリン)、山本一輝(ヴィオラ)、パク・イェウン(チェロ)。昨年12月にチェロの築地杏里が退団、代わってパク・イェウンが出演。
●プログラムはハイドンの弦楽四重奏曲第37番ロ短調op.33-1、ジョン・ゾーンの「キャット・オー・ナイン・テイルズ」、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番ヘ長調。古典派の2曲のなかにジョン・ゾーンが入っているおかげで、ぐっと尖がったプログラムになっている。気のせいだろうか、全席リクライニング可能というこの名物シリーズ、あえて「絶対に寝させない」的なプログラムを持ってくる人が多いような……? 事実、ジョン・ゾーンははなはだ刺激的。ゴリゴリの不協和音の嵐のなかに陽気なメロディ等が割り込んでくるコラージュ作品なのだが、そのゴリゴリの部分が美しく響く。ベートーヴェンもキレッキレ。アンコールにベートーヴェンの弦楽四重奏曲第2番ト長調op.18-2の第4楽章。最初にチェロが主題を奏でて始まる曲なので、パク・イェウンをフィーチャーする選曲だったのかな。鮮烈で、はじけている。
九尾の猫●ジョン・ゾーンの「キャット・オー・ナイン・テイルズ」、つまり「九尾の猫」っておもしろいタイトルだと思わないだろうか。が、プログラムノートに曲目解説がないので、意味がわからなかった。日本だったら「九尾の狐」はいるけど、「九尾の猫」って、ぷぷ、かわいい……と思いきや、Cat o'nine tailsを検索すると物騒なものが出てくる。「九尾の猫」とは懲罰用の鞭で、9本の細い縄あるいは革のひもがついており、その先端に痛みを増すための結び目や金属片を付けたものなのだとか。激しい痛みを与えることから、軍隊などで規律違反を罰するために使われていたという。この曲、クロノス・クァルテットの録音には Tex Avery Directs the Marquis de Sade という副題が付いている。テックス・アヴェリーはバッグス・バニーなどで知られるカートゥーン黄金時代のアニメーター。カートゥーン調のタッチでアニメ化されたマルキ・ド・サドみたいなイメージか。カートゥーン調の音楽も混入しているので、なにかの引用なのかも。もうひとつ、Cat o'nine tails はイタリアン・ホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの映画 Il gatto a nove code の英題でもあり(邦題は「わたしは目撃者」)、その音楽を担当しているのがモリコーネ。モリコーネっぽい曲調も出てくるのだが、それが引用なのかどうかは知らない。