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February 13, 2024

大植英次指揮NHK交響楽団のワーグナー&シュトラウス

大植英次指揮N響
●9日はNHKホールで大植英次指揮N響。25年ぶりのN響定期登場となる大植英次が、ワーグナー「ジークフリートの牧歌」とシュトラウスの交響詩「英雄の生涯」というダブル・リヒャルト・プロを組んだ。休憩なしのC定期なので、金曜日は19時30分開演。18時45分から「開演前の室内楽」があり、この日はドヴォルザークの弦楽五重奏曲第2番より第1楽章。ヴァイオリンに倉冨亮太、宮川奈々、ヴィオラに飛澤浩人、チェロに小畠幸法、コントラバスに矢内陽子。巨大空間での室内楽なので音像は遠いのだが、それを越えて熱量が伝わってくる。このコーナーはふだんあまり聴けない曲を聴けると得した気分になる。
●この「開演前の室内楽」が終わってから、本編が始まるまでにけっこう時間が空いているのだが、ロビーで会った同業の方が小澤征爾の訃報を知らせてくれた。享年88。しばらく小澤さんの話題になる。自分は仕事のご縁はなかったのだが、あらためてその存在の大きさに思いを馳せることになった。音楽に関心のない人も含めて、日本人がみんな知っている指揮者。そういう存在にだれがなりうるのだろう。
●本編は、まず「ジークフリート牧歌」。オーケストラ編成だが、冒頭部分だけは弦楽四重奏で始まった。悠然とした音楽の流れ。「英雄の生涯」は気合十分のスペクタクル。この曲、来日一流オーケストラが好んでとりあげるし、N響でもルイージ、パーヴォといった歴代首席指揮者の名演が記憶に新しいところだが、また一味違った重厚で熱血漢の英雄が誕生。どっしりと進み、粘性強め。コンサートマスターは郷古廉で、ソロは抜群の巧さ。流麗で雄弁。なかなかこうはいかない。
●この変則的な開演時間のC定期は今シーズンでおしまい。24/25シーズンからは普通の休憩あり2時間の公演に戻る。やはり定着しなかったか……という印象。あと、来季からの変更点としては、サントリーホールで開催されるB定期が水・木から木・金に変わる(→参照:2024-25シーズン定期公演 出演者・曲目発表)。