amazon
June 30, 2025

METライブビューイング リヒャルト・シュトラウス「サロメ」(クラウス・グート演出)

●27日、久々に東劇でMETライブビューイング。クラウス・グート新演出によるリヒャルト・シュトラウス「サロメ」。指揮はヤニック・ネゼ=セガン、サロメにエルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー、ヨカナーンにペーター・マッテイ、ヘロデ王にゲルハルド・ジーゲル、ヘロディアスにミシェル・デ・ヤング、ナラボートにピョートル・ブシェフスキ。やはり題名役のヴァン・デン・ヒーヴァーが圧巻。歌だけでもすごいのに演技も強烈で、サロメに憑依している。狂気、妖しさに加えて少女性も感じる。
●クラウス・グートの演出が怖い。作品の倒錯性が格段に高まっている。可動式の上下2段のステージが組まれ、上のヘロデ王の宮廷はゴシック調の邸宅になっていて、下はヨカナーンが囚われる地下牢。サロメは自ら地下牢に出向いてヨカナーンと対面する。サロメには幼い少女時代から現在へと至るまでの分身がいて、その分身がときどきあちこちに佇んでいる。「7つのヴェールの踊り」ではその分身たちが勢ぞろいして、7人が順に踊り、サロメの成長の足跡を描く。分身はサロメの心象風景を表現する。
●サロメが大きな立像を倒して壊すシーンがあるのだが、あれは毎上演ごとに壊しているのだろうか。すごいな、メット。
●狂気のサロメに対し、狼狽するヘロデ王。そのコミカルなテイストが救い。
●休憩なしの2時間弱の作品で、エロスとバイオレンスがテーマになっていると思えば、こんなに映画館向けのオペラもない。ネゼ=セガン指揮のオーケストラは陰惨なストーリーとはうらはらに輝かしく鮮烈。ぞくぞくする。
●METライブビューイング、2時間弱の短時間オペラということもあり、珍しく午前11時からの回が設定されていたのでそちらへ。午前中から「サロメ」はどうかと思わなくもないが、客席はけっこうにぎわっていた。夜の回よりも盛況なのでは。