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August 26, 2025

アダム・ヒコックス指揮東京交響楽団のショスタコーヴィチ他

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●23日夜はサントリーホールでアダム・ヒコックス指揮東響。名前からピンと来る人もいると思うが、アダム・ヒコックスはイギリスの名指揮者リチャード・ヒコックスの息子。まだ29歳で2019年に指揮者デビューを果たしたばかりだが、すでにパリ管弦楽団やスイス・ロマンド管弦楽団などを指揮し、来月からトロンハイム交響楽団の首席指揮者に就任する。今回が日本デビュー。
●プログラムはリャードフの交響詩「魔法にかけられた湖」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(谷昂登)、ショスタコーヴィチの交響曲第10番。一曲目のリャードフから、整然として好感。この「魔法にかけられた湖」、着想源はワーグナー「ジークフリート」の「森のささやき」なのかな。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番でソリストを務めたのは谷昂登。中村紘子が推していた少年時代の姿を見ているので、すらりとした精悍な若者に育っていることにびっくり。冒頭から気合十分、気迫のソロ。打鍵も強靭でオーケストラと堂々と張り合える。指揮とピアノ、ふたりの若者の音楽がぶつかりあって、高揚感あふれる演奏に。終楽章は熱かった。喝采にこたえて、アンコールにチャイコフスキー「四季」より10月「秋の歌」。入念で情感豊か。少し長めのアンコール。
●ショスタコーヴィチの交響曲第10番は鮮烈、スリリング。壮絶な演奏だが、ディテールがおろそかにならず、響きのバランスも保たれている。これは客席が沸きあがるだろうなと思ったら、実際に大盛り上がりに。この曲、DSCH音型だとか、第3楽章のホルンに託した教え子のイニシャルとか、「大地の歌」引用だとか、いろんな解釈の可能性が詰まっていて、身構えてしまうところもあるんだけど、結局は純粋に音の運動性だけで熱くなれる。当然のごとくソロカーテンコールを求めて拍手が続き、ヒコックスが姿を見せると会場は大歓声に。またスゴいのが出てきたなという印象。
●そういえばウルバンスキも出てきたばかりの頃に東響でショスタコーヴィチの10番を振ってたんじゃなかったけ。そして彼もトロンハイム交響楽団でポストを持っていた。奇遇。