●11日はサントリーホールでアンドレア・バッティストーニ指揮東京フィル。イルデブランド・ピツェッティ(1880~1968)の「夏の協奏曲」とリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」を組合わせたおもしろいプログラム。爽やかな夏をカラフルなオーケストレーションで楽しむ。ピツェッティは初めて聴く曲。録音でも聴いたことがなかった。1928年に書かれた作品で、明快なメロディと豊かな色彩感が魅力。高原を散策するような心地よさ。知っている作曲家でいちばん近いのはレスピーギだろう。とくに第3楽章に顕著だが、ピツェッティも擬古的な装いをまとっている。曲名に協奏曲とあるとおり管楽器のソロがふんだんに盛り込まれている。とりわけ冴えていたのはクラリネット。
●後半の「アルプス交響曲」はバッティストーニのカラーがよく出ていた。澄明な東フィルのサウンドにパッションを注ぎ込み、大自然を描くというよりは、熱血クライマーによる一人称の音楽になっていたと思う。嵐の場面などは血沸き肉躍るといった様子で、ほとんどヴェルディのオペラの一場面のよう。「オテロ」や「リゴレット」を思い出す。終わり方もしみじみとしてエモーショナルで、人間ドラマの感じられる「アルプス交響曲」だった。こんなアプローチがあるのかと目から鱗。
September 16, 2025