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September 18, 2025

ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団のフランツ・シュミット他

ファビオ・ルイージ NHK交響楽団
●13日はNHKホールでファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団。プログラムはベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」(イェフィム・ブロンフマン)とフランツ・シュミットの交響曲第4番。前半はブロンフマンによる王道のベートーヴェン。後半のフランツ・シュミットはなかなか演奏されない曲で、自分が過去に聴いたのは一回のみ。フランツ・シュミットに特別な思い入れを持つルイージだけに、磨き上げられ、なおかつ気迫がこもった名演に。こんなにも壮麗で、切ない音楽なのかと改めて知る。
●この曲、成立の背景があまりに痛ましいため、決して日常的に接することのできない音楽でもある。1932年、フランツ・シュミットは急逝した一人娘エマのためのレクイエムとして、この曲を書いた。エマは出産の際に命を落としたのだ。このエピソードはよく目にするが、ではエマが生んだ赤ん坊、つまりフランツ・シュミットの孫がどうなったかという話はあまり聞かない。調べてみたところ、Oesterreichische Musiklexikonによれば、赤ん坊は女子でマリアンネと名付けられ、1989年まで生きたようである。交響曲第4番には深い悲しみだけではなく、慈しみも表現されていると感じるが、それは孫娘に向けた愛情や希望が源になっているのかもしれない。