●27日は東京芸術劇場で原田慶太楼指揮パシフィックフィルハーモニア東京。芸劇は休館していたので久々。ビゼーの「カルメン」組曲第1番、リヒャルト・シュトラウスの「町人貴族」組曲、ベートーヴェンの交響曲第7番というプログラム。ビゼーの「カルメン」組曲第1番、録音も含めてこれを楽譜通りの曲順で演奏する人はめったにいないと思うのだが(ビゼー本人が編んだものではないし)、今回は楽譜そのままの演奏。つまり、第1幕前奏曲後半の悲劇的な「運命の主題」で始まるのだ。で、おしまいの6曲目が賑やかな第1幕前奏曲前半で終わる。こんなふうに第1幕前奏曲を分割して、後半の暗いほうでスタートしておいて、前半のハッピーなほうで終わのって、一見なんかヘンだなって思うじゃないすか。原田は登場するやいなや、拍手が収まるのも待たずに、いきなり振って第1幕前奏曲後半を始めた(クライバーばりに)。間奏曲ではフルート、さらにオーボエを立奏させて、自分は指揮台を降りる。で、おしまいの第1幕前奏曲前半(この組曲中では「闘牛士」という題で混乱を招く)を威勢よく始めて、途中で客席に向かって手拍子を求めた。場内、「ラデツキー行進曲」みたいに手拍子でいっしょに盛り上がって、いきなりのハイテンションに。あー、これをやりたかったんだ、と納得。演奏は細部まで練られていて、とても雄弁。
●続くリヒャルト・シュトラウスの「町人貴族」組曲は編成が特殊なので、舞台転換に時間がかかる。「10分ほどかかる」ということで、原田はコンサートマスターの塩貝みつるを伴って登場してトーク。欧州の歌劇場で経験豊富な塩貝とともに、シュトラウスのオペラや「町人貴族」組曲の魅力について語る。「カルメン」が盛大だったのに対して、「町人貴族」組曲は室内楽的なサイズに縮小して、親密な対話の音楽に。後半のベートーヴェンは期待にたがわず熱血。伝統的なスタイルを基盤に置きつつ、そこに一段のダイナミクスの幅や切れ味の鋭さ、ディテールへのこだわりを盛り込み、より熱く、より表現のコントラストの大きなベートーヴェンを作り出す。楽章間をアタッカでつなげるのも効果的。終楽章は煽りに煽って、オーケストラは目一杯だったと思う。
●パシフィックフィル、名称を変更して以来、足を運んだのはこれで2回目かな。客層は若い人もベテランもいて幅広い。東京はこれだけたくさんオーケストラがあっても、それぞれが自分たちのお客さんを集めているのがすごい。
September 30, 2025