●遡って9日午前、東京芸術劇場で2025年度全国共同制作オペラ「愛の妙薬」(ドニゼッティ)記者会見へ。毎回、演出をいろいろな分野の人が務めることで話題のシリーズだが、今回は演出家の杉原邦生がオペラに初挑戦する。自らを「悲劇の演出家」と位置付ける杉原は、初めてのオペラ演出が喜劇であることに驚きつつも、挑戦しがいがあると語る。杉原「大学に入って演出を始めた頃から、欧米の著名な演出家たちがオペラを手がけていることを知って、いつかはオペラをと考えていたので、ついに来たかと思った。映像で『愛の妙薬』を見て、シェイクスピアの喜劇みたいだなと思いつつ、『カワイイ』と感じた。今回の演出は『カワイイ』がキーワードになる」
●写真は左より、糸賀修平、宮里直樹(以上ネモリーノ役)、高野百合絵(アディーナ役)、杉原邦生(演出)、大西宇宙、池内響(以上ペルコーレ役)、秋本悠希(ジャンネッタ役)。東京芸術劇場、フェニーチェ堺、ロームシアター京都の3都市での開催。11月9日の東京芸術劇場を皮切りに堺、京都と続く。高野「お客さまが心温まる舞台にしたい。アディーナ役は軽さだけではなく力強い声も必要な役」、宮里「『愛の妙薬』はぼくのいちばん好きな作品」、大西「シカゴにいた頃もシェイクスピアの演出家やミュージカルの演出家といっしょになった。異種格闘技的な舞台は楽しみ」と、それぞれが抱負を語った。なお、ドゥルカマーラ役はセルジオ・ヴィターレ、指揮はセバスティアーノ・ロッリ。オーケストラは各地で異なり、東京はザ・オペラ・バンド。ダンサーも登場する。
●で、今回のフライヤーのデザインはこんな感じで、彩度の高いピンクが目に眩しい。「愛の妙薬」って本当によくできたロマンティック・コメディだけど、いかにも農村の素朴な人たちの物語という感じで、都会人から見た農村ファンタジーになっていると感じるが、このデザインからも察せられるように、舞台はバスクの農村ではなく、特定の土地や時代を示さない模様。大胆演出が売りのこのシリーズだが、今回はジェンダーレスな要素が加わるというヒントがあって、なるほどと膝を打った。期待大。
October 16, 2025