●さて、世間はショパン・コンクールの話題で持ちきりだが、ここでわれらがJリーグのことも振り返っておきたい。今季、残り4試合。降格ライン上をさまようマリノスは浦和レッズ相手にまさかの4対0で完勝。同じ勝点で並んでいた横浜FCは引き分けたので、これで勝点2差で17位。ギリギリ残留できる順位だが、横浜FCはすごい勢いで勝点を積み上げてきており、まったく予想がつかない。マリノスか横浜FCのどちらかが残り、どちらかが降格する可能性が高い。
●ちなみにマリノスだが4点獲ったといっても、とっくにアタッキングフットボールは捨てている。今はボールを持たない、パスを回さない、手数をかけないサッカーが基本。この試合のボール保持率はわずか38%。パスは237本で往時の半分以下、しかもパス成功率は59.9%しかない。これもかつては80%くらいだった。ゴールキーパー(朴一圭)はディフェンスにパスをつながず、大きく蹴る。
●サッカーはこれがいちばん効率がいい。今はもう夢を追っている場合ではないので、こうするしかない。一般論として、ボールをつなぐ攻撃的なサッカーよりも、安全第一のサッカーのほうが勝点を得やすい。だが、前者は楽しく、後者は退屈だ。この大いなる矛盾にサッカーの核心があると思う。
●で、この試合、マリノスはキックオフ時にボールを大きく蹴って、故意に敵陣深くのタッチラインを割るようにしていた。キックオフで自分たちがボールを持って攻撃するよりも、わざわざ相手ボールのスローインにしたほうが有利だ、と考えているのだ。最近の欧州で流行しているキックオフ戦術を取り入れたようだ。
●これがなぜ有利なのか。おそらく、緻密な分析を基にした統計的な裏付けがあるのだと思う。相手の布陣が完全に整った状態では、自分たちがボールを持ってもまず得点にはつながらないのに対して、敵陣深くであれば相手のスローインからボールを奪ってチャンスになる可能性が少しはある、ということなのか。以前、オシムが「自分たちのスローインではピッチ内は常に数的不利になる」と指摘していたのを思い出す。
●これほど退屈なキックオフはないと思うが、このキックオフ戦術はどんどん広がると思う。
October 20, 2025