●26日は東京芸術劇場でエドワード・ガードナー指揮読響。ディーリアスのオペラ「村のロミオとジュリエット」から「楽園への道」(ビーチャム編)、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(パヴェル・コレスニコフ)、ブラームスの交響曲第1番というプログラム。ディーリアス「村のロミオとジュリエット」の「楽園への道」を聴ける機会は貴重。このオペラ、録音で全曲を聴くと、ほとんどワーグナー。タイトルから予想されるように、許されざる恋に苦しむ若いふたりが現世に別れを告げるというストーリーで、物語的にも音楽的にもジェネリック「トリスタンとイゾルデ」と言いたくなるほど。ただ、あとから付け加えた「楽園への道」の部分はワーグナー風味がいくぶん薄まって、ディーリアス特有の憂愁と甘美が前面に出ている。まちがいなく傑作。エドワード・ガードナーと読響の演奏は、官能性は控えめで、透明感と抒情性が勝る。
●チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番で独奏を務めたパヴェル・コレスニコフは初めて聴く人。大柄でキャラの立った人。第1楽章冒頭をアルペジオで弾いていた。これは初期稿を参照しているということなのかな。力強く始まると思っていたら、かわいい感じで始まってびっくり。しかしその後は強靭かつダイナミックで、クライマックスに向けての追い込みはスリリング。ソリスト・アンコールにショパンのワルツ第19番イ短調。こちらはしっとり。後半のブラームスの交響曲第1番は端正。オーソドックスな造形で、重くならずに前へ前へと進む。少しあっさりしすぎかなと思いきや、じわじわと白熱して、これぞブラームスというしっかりした聴きごたえを残す。オーボエ、ヴァイオリンのソロも沁みる。
October 28, 2025