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Books: 2010年2月アーカイブ

February 26, 2010

「百姓貴族」(荒川弘著/WINGS COMICS)

「百姓貴族」●ヤバい、笑い転げて悶絶。なんですか、このおもしろさは。ハガレンこと「鋼の錬金術師」で知られる荒川弘の農家エッセイコミック「百姓貴族」。
●最近知ったんだけど、荒川弘さんの名前って「ひろむ」って読むんすね。そして「ハガレン」読んでてうすうす感じてたように女性である。なんとお子さんまでいる。
●北海道の農家の生まれで、デビュー前に家業の酪農を手伝っていた頃のネタがこのエッセイコミックになってるんだけど、なんというか、その農家のスケール感がその辺の「畑やってます」とはぜんぜん違って、壮大なんである。これ、日本なの?とか。
●牛ネタがことごとく秀逸。牛の世話が日常になってる世界。「牛は案外賢い」という話なんて最高だな。あと都会の感覚からすると結構エグい話題も多いんすよね。やはり生き物は別の生き物の命によって生かされているという、生の本質を常に剥き出しで間近に見ているわけだから。なるほど、こういう環境があってこそ、「ハガレン」的な死生観が生まれたのだなと納得。
●2、3回繰り返して読んでもまだ笑える。超傑作。

February 13, 2010

「サッカー日本代表システム進化論」「ねにもつタイプ」

サッカー日本代表システム進化論●さらっと読めて、しかもおもしろい。「サッカー日本代表システム進化論」(西部謙司著/学研文庫)。これは戦術入門書というよりはニッポン代表の歴史書で、「誰が来て何をして、歴史がどう進んだか」を振り返るところがいいんである。視野に納められているのは、森ジャパン以降の日本代表。オフト監督より前から追いかけている。オフト以前の代表が単なる暗黒時代だと思っている方にも一読の価値はあるはず。あと、ワタシのなかで悪名高い「ファルカン・ジャパン」が何をしようとしていたのか、本書を読んで初めて知った気がする。
●「現場の証言」をインタビューで拾い上げていて、これも興味深い。木村和司、横山謙三、柱谷哲二、山口素弘、福西崇史他。
ねにもつタイプ●もひとつ。「ねにもつタイプ」(岸本佐知子著)が文庫化されている。前にもご紹介したけど、未読の方には角度45度くらいの前のめりでオススメ。ただし電車で読んでるとクスクス笑ってしまってヤバい人になりがち。

February 10, 2010

ゾンビと私 その16 「高慢と偏見とゾンビ」を読んだ

高慢と偏見とゾンビ●ようやく読了、「高慢と偏見とゾンビ」(ジェイン・オースティン、セス・グレアム=スミス著/二見文庫)。いやー、なんと言ったらいいのか。おもしろかったっすよ。さすが「全米で誰も予想だにしない100万部を売上げた超話題作」(笑)。
●これ、ジェイン・オースティンの名著「高慢と偏見」を下敷きに(そう、思いっきり下敷きに)、ところどころゾンビが出てくるという小説なんである。8割方は「高慢と偏見」そのまんま。主要登場人物とその造形、ストーリー展開も同じ。ただ、ときどきゾンビ。設定上、18世紀末イギリスには謎の疫病が蔓延して、ゾンビ化していて、主人公エリザベスをはじめとするベネット家の五人姉妹は全員鍛えられた戦士、ダーシー様もきわめて高い戦闘能力を有しており、ゾンビをぶった斬ってくれる、たまに。
●で、ワタシはマジメに堪能したんすよ。あー、ダーシー様の最初の印象ってこんな感じだったなー、とか、長姉のジェインって奥ゆかしくていいよねー、とか、そういえばいたなあ、ウィカムとかいう軽薄な男が!とか。……ていうか、それ要するに「高慢と偏見」再読を楽しんでるだけなんでは。
●そう、実を言えばゾンビ成分は案外薄い(だから本国ではゾンビ3割増量のデラックス愛蔵版も刊行されているんだとか)。ただ、そこのところにワタシはリアリティを感じる。ゾンビうじゃうじゃだったら、人は生き残れない。これ、田舎の話なんすよ。今後世界がゾンビで埋め尽くされた後、これまでにも当連載で言っているように、生き残った人々は都市部を捨てて人口密度の低い農村地帯で暮らす可能性が高い。そうなったとしても、人はゾンビと戦いながらも日々の暮らしの中でロマンスを夢見ることを止めたりはしない。世界で戦争が起きようと、革命が起きようと、半径20メートルの世界で起きるロマンスが色褪せることはない。ならばポスト・ゾンビ時代においても。これは古典の再演出とでもいうべき、予言的なロマンス小説なのだ。
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●ゾンビ関連記事を「ゾンビと私」特設ページにまとめることにした。読み逃した方はぜひ、もう読んだという方は再読を。このゾンビ時代を生き残るために。

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