News: 2006年4月アーカイブ

April 24, 2006

二期会「皇帝ティトの慈悲」~ビミョーにモーツァルト・イヤーその6

モーツァルト●話題のペーター・コンヴィチュニー演出による二期会「皇帝ティトの慈悲」へ(21日 新国立劇場)。ユベール・スダーン指揮東京交響楽団。創意と工夫に満ち溢れ、エンタテインメント精神と批評精神両方に富んだ充実した舞台だった。これくらい思いっきりオペラを楽しんいるお客さんを目にする機会って、なかなかないんじゃないだろか。おもしろいからしかつめ顔で見ているのもだんだんバカらしくなって、後半は音楽が鳴っていても「あのライオン、さっきの子が入っているのねえ~」「あの黒い服を着た人はホントに楽器を弾いてるのかしらん」みたいな私語が客席を飛び交い、そして「オオオ」「ワハハ」という自然な感情の発露がもたらすノイズがたびたび発生する。いいんじゃないの、これがフツーの人間の楽しみ方だし。
●モーツァルトの「皇帝ティトの慈悲」、この話ではタイトル通り皇帝が実に慈悲深い。自分の暗殺を謀る者までも赦してしまう。それくらいの寛大さを持った偉大な統治者なんである。だからあらすじ上は退屈な話だ。でもコンヴィチュニーのティトからは、前半は立派に振舞うけれどもホントは煩悩だらけで世間ってものにもイマイチ疎いバカ殿テイスト入ったティト像がうかがえたし、後半からは叡智というよりは優柔不断さゆえに寛大になってしまう、自分の重すぎる役割を果たすことに疲弊した権力者像が伝わってきた。ティト以外の役柄もキャラクターが立っていて、退屈かと思っていた作品がとても生き生きしたものに見えた。音楽もこれに連動していたように思う。
●で、いろんな仕掛け満載の小ネタ。照明をチカチカさせて序曲を止めたりとか、ティトが倒れて「お客様にお医者様はいらっしゃいませんか~」をやったりとか、ティトが2幕頭で観客席に座って(チケットをちゃんと見せる)聴きはじめるとか、大変楽しい……が、これが少し微妙かなと思わんでもない。小ネタは新鮮で、裏返すとフツーのオペラがつまらなく見える(この日はじめてオペラを見たお客さんが、次回足を運んだときに落胆しないかと心配になるくらい)。でもこれくらいの小ネタでウケるのはオペラ劇場限定のぬる~い笑いで、賞味期限があるかもしれない。同じ観客もオペラ以外の舞台(あるいはテレビ番組)に接したときははるかに無慈悲になる。オペラじゃなかったら、ワタシだったらクスリとも笑わない。だからこそオペラはスゴい、モーツァルトの音楽は偉大なり、ともいえるんだけど。

April 21, 2006

ソムトウ・スチャリトクル演出のオペラが見たい

●「今バンコク・オペラが面白い!?」(「おかか1968」ダイアリー)を読んでいて懐かしい名前に。バンコク・オペラで東南アジア初となるワーグナー「ニーベルングの指環」プロジェクトが開始、まずは「ラインの黄金」がソムトウ・スチャリトクルの指揮と演出で上演されたという。ぐはっ、スチャリトクル。どうやらスチャリトクルは現在のタイのクラシック音楽界のキー・パーソンとして活躍しているようではないか。若い頃にはシュトックハウゼンやブーレーズの影響を受けた作品を作曲していたという。
●が、ワタシの知ってる(そしておおむね日本で知られている)ソムトウ・スチャリトクルとは、SF小説の作家である。代表作は「スターシップと俳句」。残念ながら現在は品切重版未定のようだ。ウチの本棚にはある。もう記憶は不確かだが、あちこちのサイトを見て補うと、だいたいこんな感じの話(違ってたらゴメン、現物の本は探し出せそうもない)。
●核戦争後の地球、放射能汚染により人類は滅びそうになってるんだけど、かろうじて日本は文明を保っている。日本人は未来に絶望し、古来からの「滅びの美学」に基づいて、自殺がファッションとして大流行する。そんななかで、ある大臣が絶滅したと思われていたクジラとのコンタクトに成功する。クジラは実は大変知的な動物で、そもそも人類は太古の昔、クジラによって知性を与えられたことが判明。日本人たちはクジラを食べてきたことにショックを受け、恥辱のあまりどんどん自殺しちゃう。金閣寺から飛び降り自殺。雪の降る日本庭園で美しく切腹。火山の火口から飛び降りて夫婦心中。遊園地で途中でレールの途切れてるジェットコースターでダイブ。これではいかんと、主人公は人類とクジラの子孫を前世紀の遺物たる宇宙船を使って希望の失われた地球から脱出させようと試みる……。
●なにせタイトルからして「スターシップと俳句」っすよ。相当日本勘違い系の小説かと思いきや、実はそうじゃなくて、ワザとやってる。スチャリトクルは日本に在住経験がある。あ、そういえば彼はタイ王国30番目だかの王位継承権を持ってるって話だったんだけど、今何番目なんだろか。
●で、そんな人が「リング」やら「魔笛」やら「ねじの回転」「アイーダ」「トゥーランドット」なんかの演出をしているわけだ。人力車に乗って出てくる三人の童って(笑)。見たいでしょ、すっごく。ああ、頼む、どこかのオペラ団体がスチャリトクルを日本に呼んでくれないか。コンヴィチュニーの次はスチャリトクルが来る、きっと来る。
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●業務連絡を一件。今週末、仕事場兼自宅の引越しをします。土曜日の日中はほぼ連絡取れなくなります。ネット環境はトラブルがなければ土曜夜には即復旧予定。新しい連絡先は早めに各所にお伝えします。もっとも最近はケータイがあるからなんとでもなるんすよね。
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●↑引越し完了。ネット復旧なり。

April 13, 2006

「レッツゴー!クラヲくん」第7回

●連続ドラマ「レッツゴー!クラヲくん」第7回

「おー、クラヲ~、あの曲のCD貸してくれー。イナバウアー、持ってるよな」
「あるよー♪ アルファーノ補筆版とルチアーノ・ベリオ補作版とどっちがいい?」

April 12, 2006

今日はなにをどこから聴こうかと悩む贅沢

●「みんなの告知板」に書き込んでいただいたものから一点告知。TDKコアのDVDソフトを抽選でプレゼント。マチェラータ音楽祭でのドニゼッティ/オペラ「愛の妙薬」、「OPERA EASY オペラ嫌いのためのオペラ入門」他。TDK株式会社さんのウェブサイトの感想を書いて応募するべし。TDK DVD活用ガイドの左下の「プレゼント」から。
●音楽配信サイト MaXMuseのクラシック・コーナー更新中。先日サイト全体がリニューアルされ、わかりやすいデザインになった。クラシック・コーナーは週一回ペースでレギュラー更新していく予定。
マゼール/ニューヨーク・フィルのモーツァルト●音楽配信といえば、ドイツ・グラモフォンとデッカがライヴ音源の配信に参入(DG concerts)。まずはニューヨーク・フィルとロス・フィルの演奏会の録音をiTunes経由で配信していくとのこと。写真のような「ジャケット」が用意されているのだが、これはデータのみのバーチャル・ジャケット。CDでは発売されずネット配信のみである。時代の流れを感じる。ニューヨーク・フィルのほうは、マゼール指揮によるモーツァルトの後期三大交響曲集(第39番、第40番、第41番「ジュピター」)。つい先日まで期間限定でニューヨーク・フィル公式サイトで無料配信されていたものではないか。ワタシはPCで聴いたが、マゼール節炸裂の大変すばらしいモーツァルトであった。

Maazel & New York Philharmonic - DG Concerts - Mozart: The Last Symphonies

April 9, 2006

最強バリュー・セット。「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」

●金曜夜は新国立劇場で「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」定番の二本立。指揮がファビオ・ルイージということで楽しみにしてたのだが、期待以上にすばらしく満喫。東フィル、すごいな。同時進行でオペラではルイージ、定期ではハーディングの「復活」とは。
●マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」とレオンカヴァッロ「道化師」といえば、いわゆるヴェリズモ(真実主義)オペラの二大傑作。19世紀末の南イタリアの地方色と宗教色を背景として、貧困階層の日常生活に訪れる悲劇を写実的に描いたオペラということになる。が、そんな歴史的背景を切り離しても、この二作品はなんの読み替えも必要とせず現代に通用するドラマを持っている。この演出(グリシャ・アサガロフ)でも1950年代に設定してるとかあるけど、別にこれが昭和の日本でもどこでも違和感はない。「道化師」のカニオだってステテコに腹巻き?のオヤジみたいな感じで親しみ持てるし(笑)。両作品とも音楽的にも名曲揃い、退屈する場面がない。台本も簡潔にまとまっているのが吉。
●ワタシは舞台でも映画でも出来のいいものを見るとすぐ感化されるほうである。「スパイダーマン」を見て映画館から出ると、ビルからビルへとジャンプして飛び移れるかのような錯覚を覚えるし、「スターウォーズ」を見た後はいつの間にか「ハーーー、スーーー」って呼吸音を立てながら街を歩いていた。だから、初台からの帰り道は血沸き肉踊るイタオペ野郎になっていた。ええい、お前さんたち、オレの行く道をさえぎるんじゃねえ。要らぬ手出しをするヤツとはこのナイフで決闘だー。が、幸い、だれの右耳を噛むこともなく、ワタシは無事帰宅した。深夜、BSで「プロムス」のラストナイトの中継があったので勢いでこれも見た。お、今年から指揮しているポール・ダニエル、なかなかしゃべりが上手だなあ。いいぞ、BBC交響楽団。いつの間にかワタシは血沸かず肉踊らない紳士となり、心の中でユニオンジャックを振りながら、見たこともない大英帝国を懐かしみつつ歌っていた。♪Land of Hope and Glory~。

April 7, 2006

須栗屋敏先生が出張鑑定中!

須栗屋敏●一部限定好評キャラ、あの須栗屋敏先生が出張鑑定! ケータイ着メロサイト「音友クラシックコンサート」にて、あなたにぴったりの着メロを選んでくれるという脱力企画、モーツァルト着メロ占いを開催中。あ、会員じゃないと見れないのか。でも100円だし、フツーに着メロサイトとしても利用価値大なので、よろしければぜひ。下のQRコードからジャンプできるぞ。QRコードがわかんない人はケータイのトップメニューから「着メロ」→「クラシック」を探すべし。

音友クラシックコンサート

●WOWOWのスペインサッカー、ベティスvsセビリア戦、試合中に黒ネコが乱入。どこから入ってくるのか、ネコ。突如ピッチ上にあらわれたネコは事態を理解できず、とりあえず脱兎ならぬ脱猫のごとくダッシュ。現地カメラはスロー再生でしなやかに疾走するネコの姿をリプレイしてくれた。グッジョブ、カメラマン。

April 5, 2006

ムーア人、打つべし

●新年度。ビジネス街はやたらと人で混雑している気がする。都心の人口は一時的に増えている。5月くらいになると元に戻る。減った人たちはどこへ?
●東京オペラの森「オテロ」、結局後半はタイトル・ロールのクリフトン・フォービスが復帰していたようである。ゲネプロしか見てないからナンだが、クリスティーネ・ミーリッツの演出はウケたんじゃないだろか。オテロはボクサーガウンに身を包み、四角いリングで拳を掲げる格闘家と見立てられていた。スパーリングのまねごとまでやってみせる。戦時には英雄として讃えられる異邦人、しかし平時には忌むべき暴力的存在。この存在が現代のどこにいるかといえば、ラスベガスあたりのリングにいるということなんだろう。シーザースパレスやマンダレイベイで華やかに開催される世界タイトルマッチでは、客は熱狂的に有色の闘士たちの凶暴性を讃えている。が、リングを降りた暴君をリーダーとして迎えようとする者はいない。オテロにはオスカー・デラホーヤみたいにリングの外で敏腕ビジネスマンとして立ち回る器用さはない。ミーリッツ版オテロの顔は褐色ではなく真っ黒に塗られていた。マイク・タイソンを思い起こす。
●タイソンといえば、しばらく前にWOWOWの中継で誰か(名前も思い出せない)と対戦して、無残にマットに沈められていたのを見た。そりゃまあ年齢的にもずいぶんな歳なんだが、それにしてもあのマイク・タイソンがこんなにも弱いなんて。デビュー直後は全身から獰猛な獣みたいなオーラが出てて、ブラウン管越しで見てても恐怖を感じたくらいだったのに。マイク・タイソンにとって、名トレーナーのカス・ダマトがデズデモナ、プロモーターのドン・キングがヤーゴ……だったらおもしろいかなと思ったけど、んなこたぁないか。

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