News: 2006年9月アーカイブ

September 28, 2006

ショスタコーヴィチ・ラスト・ナイト

●中村俊輔@セルティックの試合の話は日を改めるとして。
ショスタコーヴィチ。忘れないでくれオレを●モルゴーア・クァルテットのショスタコーヴィチを聴きに第一生命ホールへ。生誕100周年記念弦楽四重奏曲全曲演奏会ということで、なんと3日間5公演(つまりダブルヘッダーが2日ある)で番号順に全曲を弾き切るという企画。ワタシはその最終日の第13番~第15番だけを聴き、それだけで十分なくらい濃密な時間を堪能したんだけど、全曲聴いてたら第15番の終楽章に滂沱の予感。ていうか、これ、演奏会の前に紹介するべき話題だったなー、と今気がついて激しく後悔。5回セット券で5000円とかなってたし。
●アンコールに3年まえに発見された未完の弦楽四重奏曲(1961/62)。自筆譜には「弦楽四重奏第9番作品113」と記されているそうだけど、未完成に終わってしまったという曲。そんなものが聴けようとは。僥倖なり。
●今偶然発見したんだけどショスタコーヴィチの生年月日(1906年9月25日)って、園部三郎とまったく同じっすね。だからどうってことではないが。
●恒例、DHC FROM 40にて連載「オトナのためのクラシック音楽入門」第22回掲載中。

September 26, 2006

Re:アマデウス・ブログ

モーツァルトイヤーもあとわずか●君はもう見たか>アマデウス・ブログ@nifty。モーツァルトご本人のブログ。「プラハでちょっと元気になりました」とか。オマエは金田かっ!(←ドラマ「結婚できない男」ネタ)
●そうかー、アマデウス、弦楽五重奏書きたくなったかー。弦4本で十分だと思うんだけど、なにが不満なんだろか。で、5本目はヴィオラなのかチェロなのか。絶対ないと思うけど、第3ヴァイオリン加えて弦楽五重奏だったら笑うぞ。
●ブログになってると自然と時系列ってのを意識して読むからおもしろいっすね。どうせならブログのエントリーの日付も2006年じゃなくて1787年とかに捏造しちゃえばいいのに、と一瞬思ったが、そこまでやるとRSSリーダー等、外側のシステムと噛み合わなくなるからダメか。
●似た試みとして、プロコフィエフの日本滞在日記というのもある(制作者のお名前もプロフィールも載っていないのが残念というかもったいない)。過去記事の1918年5月~8月の項をクリックすると、大正期の日本に滞在した(本物の)プロコフィエフの日記を読める。

September 22, 2006

真っ昼間に「ドン・カルロ」@新国立劇場

この写真は夜だが、手許にこれしかなかったのだ●新国立劇場の「ドン・カルロ」へ。昨日が最終日。平日昼公演である。もちろん「ドン・カルロ」も観たかったのだが、平日の昼間の客層を自分の目で確かめたかったのでこの日に。おー、なるほどー。やっぱりリタイヤ組、60歳以上と思われる方々が多いなあ……って、普段と同じか(?)。若者率は同じくらい。30代、40代の男性がやはり少ないようではある。空席もあるにはあるが、でもまあほとんど埋まってるわけだから、東京のオペラ人口ってスゴい。この「ドン・カルロ」だって6公演もやってて、いちばん集客力のなさそうな平日昼でこれだけ埋まるんだから。
●しかし平日の真っ昼間から「ドン・カルロ」ってどうよ、って気もする。昼っていうか、明け方まで仕事してたから個人的には朝っていうか、朝寝朝酒朝風呂朝オペラじゃ人として堕落しすぎだろ、みたいな。いや朝酒も朝風呂もしてないけど、なんとなく。なんかこう、「ドン・カルロ」だからウォオオーって熱く血がたぎるような思いをしたいわけっすよ、ホントは。劇場出たら気分は登場人物になりきって、男ならロドリーゴ、友のため理想のためなら死ねる、女ならエボリ公女、「この私の美貌はなんて罪深いのかしらっ!」と嘆く。そうありたいわけだが、起動したばかりのワタシの血圧は低く、テンションはイマイチ上がらなかった。きっと昼だったから。なのか。かな。かも。
●昼公演の楽しみ。喫煙コーナーの扉の向こう側に行く(非喫煙者でも)。あの扉の向こうは中庭である。タバコ臭いどころか、野外の新鮮な空気を吸える(逆に劇場内に戻るときに一瞬「ウッ」ってなるくらい)。青空を眺めながら休憩できる。吉なり。

September 16, 2006

なぞなぞ姫の舞台稽古。フィレンツェ歌劇場「トゥーランドット」ゲネプロ

●ガイジンさんが漢字Tシャツを喜んで着てたりするじゃないっすか、「鯖」とか「鬼嫁」とか意味不明な漢字なのに。あるいはタトゥー。「愛人」とか「腕白」とか彫っちゃってて、オレってクールみたいな。ワタシらもその逆でヘンテコ英語とかで喜んでたりするわけで、エキゾティシズムって偉大だ。こういうのって、ヘンな漢字で脱力したりするけど、でも立派な漢字だったらいいかっていうと、それもまた物足りない気もするから、西洋から見たオリエンタリズムが東洋人によって矯正されるのも良かったり寂しかったりでビミョーかもしれん。
フィレンツェ歌劇場●さて、フィレンツェ歌劇場「トゥーランドット」の公開ゲネプロを見に神奈川県民ホールへ。メータ指揮、チャン・イーモウ演出、アレッサンドラ・マーク(トゥーランドット)、カール・タナー(カラフ)、ノラ・アンセレム(リュウ)他。
●このプロダクションは2001年にも来日公演があったけど、当時と今じゃ一般の人々の「トゥーランドット」認知度が象と蟻ほど違う。なんつっても、あの「誰も寝てはならぬ」の「トゥーランドット」なんだから。カラフが歌い始めると、客席がみんなでイナバウアーしながら「♪ネッスンドルマ~」って一緒になって歌い出す……わけないよ。んなわけない、んなわけない。
●でも隣に軽く元ヤン入ってそうなご夫婦が座ったんすよ。で、幕が開けると、フツーにしゃべってたね、二人で。「あんまりよく見えないわねー」「おう、あれがトゥーランドット姫だ」。いや、それリュウだから。ていうか、全然フツーにしゃべってた。1階の前のほうの空席に移動したらしく、2幕には姿が消えていた。フツーに音楽に興味がない人が見れば、舞台を見ながらストーリーを追うわけで、まさか周りの客が音楽を聴きに来ているとは思いもしなかったんじゃないだろうか。ある意味、世間の真実。
●このチャン・イーモウの「トゥーランドット」は、1998年に北京の紫禁城で上演したっていう一大イベントがあった。あれはいろんな意味でスゴかった。本公演の模様もDVDになっているのに加えて、メイキング映像を映画として公開、ワタシはこの映画をわざわざ渋谷の映画館に見に行った。当サイトではこの映画を2002年に記事にしている→「トゥーランドット」。さすがに音楽ホールで上演するときは紫禁城みたいなスペクタクルにはならないにしても、舞台美術、衣装は実に美しい。
●大道具的には「特大拷問図鑑」が出てくるのがステキ。リュウにカラフの名前を教えれって脅す場面だったかな。チラッとしか見せてくれないけど、釜茹での刑とか截舌の刑と思われるイラスト入り。あんなの見せられたら光速で「この人、カラフでーす」って白状しちゃう、きっと。
●「トゥーランドット」は音楽的には最強で猛烈大好きなんだけど、無鉄砲な若者の物語だから「ファルスタッフ」みたいな味わい深さはないっすね。もうカラフはさー、なぞなぞ解いた勢いに任せて「オレの名前を当てたら、死んであげてもいいよ」って言っちゃうけど、その時点で自分の親父とリュウの命を危険に晒してるって、どうしてわかんないかなー。あんたみたいな人と一緒に仕事するのは絶対ヤだね。調子こくときは落とし前も自分で取れるっていう範囲でやってくんなきゃ。どうするの、リュウみたいないい子が自害しちゃったよ。そもそも周りにこんなに美女がいっぱいいるのに、トゥーランドットがいいってどういう審美眼なのさ。あー、パワフルな若者ってめんどくさい、っていうか怖いよ。
●↑こりゃまた世にも珍しいオペラの感想文だなー。バカすぎ(笑)。

September 14, 2006

フィレンツェ歌劇場「ファルスタッフ」(ルカ・ロンコーニ演出)

フィレンツェ歌劇場●文化会館でフィレンツェ歌劇場来日公演「ファルスタッフ」。メータ指揮、ルカ・ロンコーニ演出、ルッジェーロ・ライモンディ、バルバラ・フリットリ、ステファニア・ボンファデッリ他、大変豪華。期待以上のすばらしさで満喫。ああ、ワタシも「ファルスタッフ」を楽しめるくらいオッサンになってしまったということなんであろーか。
●ファルスタッフという人物像、下品で狡猾、好色、大酒飲み、自惚れの強い肥満の老騎士であってもちろんヤなヤツではあるんだが、でも根本的には憎めない魅力的な人間でなければこの話は成り立たない。老人力の一歩手前、オヤジ力が高いっていうか、機智と知恵はあるから、コミカルかつアイロニカルな物語が生きる。ルッジェーロ・ライモンディはそういう意味で完璧にファルスタッフだった。「♪ノーフォーク公爵の小姓だった頃は痩せていた、美しくて軽くてやさしい蜃気楼のように」って歌う場面なんて、最高に笑える。オペラって笑いがやたら安い傾向があるじゃないっすか。ヘンな仕草とか声でおどけてみせて客席の笑いを強要するみたいなのがワタシは耐えられないのだが、この「ファルスタッフ」にはそんな場面はなかった。
●あっ、以下、演出上のネタバレを一部含むので、これから公演をご覧になる方は読まないほうが吉。圧倒的に。
●フリットリのアリーチェとボンファデッリのナンネッタはちゃんと若いお母さんとその娘に見えるからスゴい。ボンファデッリが華奢で美しいからなんだけど、ところがその恋人役フェントンのダニール・シュトーダ、この人が全然青年に見えない。なんだこりゃ、他のキャストは全部役柄にふさわしいのに、こんな中年太りが進行中のフェントンでいいのかね、なんだかナンネッタを抱くときの手つきもオヤジくさいし、衣装も一人だけありえないダサさだし、なんだかなーと最初は思ったのではある。が。
●第3幕に仕掛けがあった。ガーター亭の部屋からウインザーの森に場面転換するところ、あそこでなんとファルスタッフが眠っているベッドだけを取り残して、森に転換するのである。舞台は森だけど、ファルスタッフはベッドでずっと眠ったまま。つまり、第3幕はファルスタッフの夢ということになる。では夢のなかでの主人公はだれだろうか。第3幕に最初に登場する人物と考えるのが自然だ。フェントンとナンネッタ。二人を主人公とするならば、この幕は恋する若者が結婚に反対するお父さんをだまして結ばれるというラブ・ストーリーである。夢の中でファルスタッフはフェントンになっている。ああ、フェントンとはヤング・ファルスタッフだったんだ。なるほどー、だからフェントンは野暮ったいヤツとして描かれていたのかー。もちろんファルスタッフは途中からベッドから起き上がり、本来オペラに含まれるファルスタッフの役を歌う。
●夢の中では、自分が演じる一人称の役柄があって、それとは別に神視点での自分本人が同時に存在するというのは、よくあること。この夢の第3幕では前者がヤング・ファルスタッフたるフェントン(ノーフォーク公爵の小姓だった頃を思い出して見た夢だろうか)、後者がファルスタッフ自身。この夢は大変都合よくハッピーエンドで終わる。夢なんだし。
●でも待てよ。夢に入る前、現実のファルスタッフはどこにいたか。ベッドで寝込んでいたのだ。なぜ寝込んだかといえば、洗濯籠ごと川に捨てられるという酷い仕打ちを受けたから。じゃあ肺炎でも起こして寝ている病人の願望充足夢だったのかと思うとこりゃずいぶん辛辣な話になってしまうじゃないか。そんなシニカルな要素はこの話にはないだろう。ファルスタッフは嫌われたり愛されたりしても、孤独な人物であるはずがない。行け、ジョン。夢なんか見てる場合じゃないぞ……。いや、でもまあ、いいか。夢でも現実でも大したちがいはない。人生なんてみんな悪ふざけだ(って歌ってるんだから)。
●↑と、勝手に解した。あ、オペラの感想を書いてるのに、一言も歌に触れてない(笑)。

September 6, 2006

♪フィ~ガロ、フィガロフィガロフィガロ、フィーガロ

●もうすぐこのドラマ、終わるんだよなあ、阿部寛主演「結婚できない男」。いよいよエンディングに向けてテレビドラマ的に本筋部分が盛り上がってきたため、小ネタが控えめになってきて少し寂しい。いや、でも十分楽しんでるんだけど。
●さて今週登場の曲は、ロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」から「私は街の何でも屋」。「♪フィ~ガロ、フィガロフィガロフィガロ……」って歌ってるところに、信介がボソリと「違うな」と言ってストップ。そんな愉快な音楽を聴いている場合ではない。
●ロッシーニの「セビリアの理髪師」にはフィガロが登場する。フィガロといえばモーツァルトの「フィガロの結婚」。登場人物が共通する。これはともにボーマルシェの戯曲が原作で、「セビリアの理髪師」の続編が「フィガロの結婚」である。ってのはクラヲタ的にはみんな知ってるわけだけど、ワタシはこれを最初に知ったときには結構違和感があった。音楽史的にはモーツァルトの「フィガロ」のほうが先になのに、物語的にはロッシーニの「セビリアの理髪師」が先。ヘンなの。
●ちなみにボーマルシェの戯曲は三部作である。「セビリアの理髪師」「フィガロの結婚」と来て、おしまいは「罪ある母」。どんな話か調べてみると、なかなかヤな感じっぽくて凶。時代設定は「フィガロ」から20年以上も経ってて、伯爵夫人はケルビーノと不倫してて、二人から不義の子レオンが生まれ、これを苦にしたケルビーノは自殺(ええっ)。一方伯爵はレオンが実の子ではないと知り冷遇、代わりに他の女に産ませた子供を養女に迎えて溺愛。そんな背景で、レオンが成人したところから戯曲は始まるそうだが、なんだか「セビリア」や「フィガロ」と雰囲気が違ってそう。こりゃだれもオペラ化しなかったわけだ……。
●いや、しかしこの「罪ある母」もオペラの一部にはなっている。アメリカの作曲家ジョン・コリリアーノのメト創立100周年委嘱作「ヴェルサイユの幽霊」、このなかの劇中劇として「罪ある母」が出てくる……ようだ。このオペラ、以前レーザーディスクでは出てたけど、ワタシは惜しくも見逃してしまった。DVD化は少なくとも日本ではされていないと思う。
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●音楽配信サイトMaXMuse クラシック・コーナーにて、さっくりとオペラ特集掲載中。どぞ。

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