●先日、5年に1度発表されるNHK放送文化研究所の「2015年国民生活時間調査報告書」(PDF)を見て、日本人の早朝化がますます進んでいるということを知った。以前、2010年の発表を見て人々の早起き化に驚いて話題にしたことがあるが(平日夜の19時開演)、それに続く5年後の調査を見ると、さらにみんな早起きするようになっていたんである。というと、「高齢化が進んだ分、引退した老人たちが早起きしているだけでは?」と思われるかもしれないが、そうともいえない。というのも、有職者たちが早朝にシフトしているから。そして「有職者の仕事時間はこの15年間変わらない」「早寝も増加」ということなので、トレンドとしては早起きして早くから働いて、早めに仕事を終えて早めに寝るようになった、ということになる。
●15分ごとの行為者率で見ると、平日に国民全体で半数以上が起きるのは6時15分。一方、平日に半数以上が寝るのは23時(p.48)。これは全年齢で見た場合で、年配の人はさらに早寝早起きになっている。夜の遅い業界で働く人には信じがたい結果かもしれないが、今や早寝早起き化はここまで進んでいる。
●というレポートを見た後で、たまたま手にした「朝型勤務がダメな理由」(三島和夫著/日経ナショナル ジオグラフィック社)を読んだ。著者は睡眠障害の研究者で、国立精神・神経医療研究センター研究所部長。書名からして夜型人間を励ましてくれるようなところがあるが、勤務時間を朝にシフトさせることは心身両面に負担をかけることになるのであり、またサマータイムには合理性がないと一刀両断してくれいて気持ちがよい。一方でさらに進む早起き化。なぜ、みんな早寝早起き化しているのか、そしてこのトレンドはどこまで続くのかが気になるところ。
●ちなみに、この本は睡眠にまつわるいろんな疑問に答えてくれる良書である。たとえば、年を取るに伴って、眠りが浅くなったり短くなったりするといわれるが、じゃあどれくらい加齢とともに変化するのか、これを定量化して述べてくれているのがうれしい。たとえばこんな感じ(いずれも成人後の変化)。
睡眠時間は10年ごとに10分ずつ短縮する。
夜間の中途覚醒時間は10年ごとに10分ずつ増加する。
睡眠時間に占める深い睡眠の割合は10年ごとに2%ほど減少する。
とまあ、明快だ。ほかにも不眠症の人は自分が知覚しているより実際にはずっと眠っているという話や、個人の睡眠時間を決める遺伝的影響とか(そんなものを調査する方法があるとは!)、睡眠薬のプラセボ効果の大きさなど、実におもしろい。オススメ。


●近年のサッカー選手の移籍のなかで、最大のサプライズ。本田圭佑がACミランからメキシコの名門パチューカへ。これはまったく予想できない結末だった。ミラン在籍中は何度も移籍のウワサが出ながらも、結局は契約を満了してしまったので、本田獲得のための移籍金はゼロ(これはミランの前に所属したCSKAモスクワを離れるときと同パターン)。つまり、どこのクラブでも無料で本田を獲得できる状態になっていた。ミランでの最後のシーズンはほんのわずかしか試合に出られず、31歳を迎えることに。



●ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第15番は全6楽章で構成され、そのすべてがアダージョ。それぞれエレジー、セレナード、間奏曲、夜想曲、葬送行進曲、エピローグと性格付けされているものの、ゆっくりとした楽章だけで全曲が構成されるというのは異例。となれば連想するのは、ハイドンの「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」。あの曲もがすべての楽章がアダージョだけでできていて、実際の礼拝に使うためにその条件で曲を書かなければならなかったハイドンがさんざん知恵を絞った末に、聴衆を退屈させない自信作ができた、みたいなエピソードがあったと思う。ハイドンの曲にも弦楽四重奏版があるわけだし、ショスタコーヴィチがハイドンを意識しなかったはずはないと思う。ショスタコーヴィチの終楽章のおしまいで痙攣するみたいなトレモロが出てくるけど、あれはハイドンの終楽章に出てくる「地震」の場面に呼応してるんじゃないだろか。