●今回、さすがだなーと思ったのは、ショパン・コンクールの優勝を見越したように、9月24日にワーナー・クラシックスからエリック・ルーの旧譜が再リリースされていたこと。ショパンの「24の前奏曲」とシューベルトのピアノ・ソナタ第14番&第20番の2タイトル。ショパンのほうは2019年の録音。エリック・ルーみたいなすでに実績のある人が優勝すると「新しいスターの誕生だ!」みたいな興奮が生まれにくいと思っていたが、その反面、こうしてすでにメジャーレーベルからレコーディングがリリースされているので、今後の公演で即座に会場売りが可能になる。前回のブルース・リウもその前のチョ・ソンジンも優勝後にドイツ・グラモフォンと契約を結んだが、エリック・ルーのように優勝した時点ですでにメジャーレーベルと契約していた人は過去にいるのだろうか。
●今回、コンクールの参加者に占めるアジア系の割合がますます高まって、1位エリック・ルー、2位ケヴィン・チェン、3位ワン・ジートンまで全員中国系だという指摘がある。それはそうなんだろうけど別の見方もあると思う。今回の1位はアメリカ人、2位はカナダ人。前回の1位もカナダ人。ショパン・コンクール史上、かつてないほど北米勢が席巻している。前々回だって1位はチョ・ソンジンで韓国だけど、2位はカナダのリシャール=アムラン、3位はアメリカのケイト・リウだった。ここから北米旋風が吹き続けている。
●「審査委員長のギャリック・オールソンが自身が上位3位に入ると考えていた出場者がひとりも本選に残らなかったとしょげていた」(朝日新聞)という話がおもしろいと思った。当の審査委員長でさえこうなのだから、いったいだれに結果が予測できるだろうか。
●17人も審査員がいれば、公平性を重んじるほど結果が最大公約数に向かうとは思う。つまり「だれが推しているのか」という主語が薄まる。もしギャリック・オールソンひとりが審査員だったら、その本選に残らなかった3人が1位、2位、3位になる。「だれが推しているのか」の主語はギャリック・オールソン。シンプルだ。
●動画はほんの少ししか見ていないが、クラオタが「この人、聴きたい」と思う気持ちだけで奏者に投票したら、1位はマレーシアのヴィンセント・オンになるのでは。
October 23, 2025