●17日はサントリーホールで大阪フィルの東京定期。指揮は尾高忠明で、得意のエルガー・プログラム。前半が「弦楽のためのセレナード」と「海の絵」(メゾソプラノ:林眞暎)、後半がペインの補筆による交響曲第3番。独唱者が当初予定のアンナ・ルチア・リヒターから林眞暎に変更になった。その「海の絵」は急遽の代役にもかかわらず堂々たる歌唱。まろやかで、深く重みのある声が魅力。この曲を聴くと、エルガーはワーグナーの後を継ぐマーラーの同時代人だと実感する。
●エルガーの交響曲第3番はアンソニー・ペインの補筆による問題作。作曲者は未完の草稿を燃やしてほしいと言ったとか。長い沈黙の後に書かれた最晩年の交響曲という点で、シベリウスの交響曲第8番のエピソードを連想するが、シベリウスのほうは暖炉にくべられて燃やされた(かもしれない)のに対し、エルガーは燃やされずに生き残り、ペインのおかげの日の目を見た。補筆といっても、補う程度で完成できる部分はごく限られているはずで、事実上、ペインとの共同作品だろうし、それでいいと思う。この作品の場合、交響曲第1番および第2番とは作曲年代も作曲家の置かれた境遇(アリス亡き後)も異なるわけで、もしエルガーが最後まで書きあげたとしても、新たな作風を見つけていたとしても不思議はない。すべては「ifの世界」。全体の大づかみのストーリーとしては、いくぶん枯れた世界をさまよい歩いた末に、フィナーレで元気いっぱいのお祭りが幻のように現れる。
●曲の終わり方が余韻たっぷりですばらしい。客席もしっかり沈黙して味わった。大フィルは完成度が高く、芯のある音でパワフル。
●なんとなく、ここにアンソニー・ペインのオリジナル作品を貼っておきたい気がする。アンドルー・デイヴィス指揮BBC交響楽団によるTime's Arrow。
February 18, 2026