January 30, 2006

THE 有頂天ホテル(三谷幸喜監督)

●映画「THE 有頂天ホテル」(三谷幸喜監督)を見てきた。ヒットしているとは聞いていたけど、たしかに劇場は混んでいて、若者中心の観客層も笑うべきところでドッと笑い、ノリがいい。ていうか、これ映画館よりお茶の間って雰囲気かも。
●ワタシはテレビドラマも舞台も見ないから、三谷幸喜っていう人は朝日新聞夕刊に大変おもしろいコラムを連載している人っていう認識で、だから以下ことごとく世間からズレてるたわ言な可能性が高いんだけど、それでも十分楽しかった(ちなみにワタシは篠原涼子という名前すら知らなかった。役所広司と香取慎吾は知ってる)。大晦日の格式ある高級ホテルを舞台に、年越しカウントダウンパーティーの準備に追われる様々な人々を描いたハートウォーミング(かもしれない)コメディ。傑作。
●で、ほのぼのしながら楽しく笑って見てたんだけど、これ、最後のほうだけギクリとしなかったですか>見た方。ワタシは「ええっ」と驚いた。物語のテーマとして「みんな、もっと自分らしく自由に生きようよ」ってのを力強く肯定するんすよ。ホテルマンやりながらミュージシャンの夢を8年間追いかけて芽が出ないまま28歳になった香取慎吾に「まだまだやれる、夢をあきらめずにがんばろう」って応援し、不倫関係の男女に「自分の気持ちに正直になろう」って開き直らせ、地道に堅実な仕事をしてるホテルの筆耕係に「さあ、のびのびと自由に文字を書いてみよう」っていって前衛書道家みたいな字を書かせる。
●人が筆耕係っていう仕事に敬意を払うのは彼らが楷書体で1mmのブレも許さないような文字を求められて書くからで、自由でニセアーティスティックな字なんて誰だって書けるんだからそんなの価値ないよ、って思ってしまうワタシはなんだか罪深いものを見た気になった。みんなが言って欲しいことを、プロフェッショナルな大人たちが言ってあげているんだなと想像すると、なんか落ち着かない。「自分らしく生きる」っていう呪文の強力さを改めて思い知った気がする。ワタシごとき未熟者が言うのははばかれるんだけど、ウチのマンションにも「自分らしく生きてる」人がいっぱいいてさあ……。

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