February 9, 2006

告白(町田康)

●新聞やニュースで伝えられることや身の回りに起きる大小さまざまな出来事、そしてそれについて巷の人々が語る言葉。その多くにうんざりさせられることがあると、こう思う。ああ、世間とワタシとにあるこの深い溝はなんだろう、彼らがなにを言っているかよくわからないし、彼らと同じようにふるまうことがどうしてワタシにゃこんなに難しいんだろうか……。
告白(町田康)●てなぐあいに1ミリセコンドでも苦悩した経験がある者は直ちに読むべし、「告白」(町田康/中央公論新社)。去年話題になった本を今頃恐縮なんだけど、まさかこれほどとは。今まで「町田康はエッセイなら死にそうにおもしろいんだけど、小説のほうはそれほどでもないかな~」などとたわけたことを思ってたバカ者は要反省(←ワタシのことだ)。
●「告白」は明治26年に起きた「河内十人斬り」を題材としている、といったことは一切知らずに読んでもオッケー。なぜ人はわかりあえないのか、そしてなぜ人は人を殺すのか。それは人は知性ゆえに思弁的になり、近代的自我を持ってしまったから。元パンク歌手のステキすぎる文体に気持ちよく惑わされながら読み、そして知る、「告白」が人の本質に迫った堂々たる傑作であることを。しかもそんな重いテーマを扱いながら、見開きあたり一回はクヒクヒと痙攣しつつ爆笑してしまうという奇跡のような小説なんである。主人公城戸熊太郎にあなたは自己を投影して共感できただろうか。できたはずだ。できないなら、あなたとワタシはなにも分かり合えない。
------------
●伊福部昭、逝く(asahi.com)。謹んでご冥福をお祈りいたします。

トラックバック(4)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/556

ハムりんの読書日記 おすすめの本 - 告白 あの語り口が飽きさせない (2006年5月20日 16:04)

告白  感想☆☆☆ 町田康 中央公論社  「告白」という深刻なタイトルが、  ストーリーとなんら結びつかないのは  町田康さんらしいところです。  河内弁のぬらぬらとした文体でも、  谷崎潤一郎賞受賞作にふさわしいかどうかは  ともかくとして、  長編... 続きを読む

時代劇の好きな町田氏が、近代的自我を持たない社会の中に、極端に自意識過剰な自我... 続きを読む

すごく面白いとは思うが、人によって好き嫌いが分かれるだろうな。 というか、この小説を思いっきりの笑顔で「だ〜いすき♪」と言える人は、かなり少ないかも。 主人公の「熊太郎」に対しては、なんかもう……感情†... 続きを読む

"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! - 告白 町田康 (2006年11月16日 14:16)

告白 この本は 「ひなたでゆるり」のリサさん にオススメいただきました。 ありがとうございました。 ■やぎっちょ書評 言いたいことがたくさんあります! それほどいろんなものが詰まった本でした。 まずは、一言で終わるところから。 600ページを超えて... 続きを読む

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「「英雄の生涯」に広告枠があったら」です。

次の記事は「偉大なるジャンルカの訃報」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ

国内盤は日本語で、輸入盤は欧文で検索。