February 13, 2006

「コジ・ファン・トゥッテ」@新国立劇場~ビミョーにモーツァルトイヤーその2

モーツァルト●せっかくのモーツァルト・イヤーなんだからと先日の「魔笛」に続いて新国立劇場で「コジ・ファン・トゥッテ」。演出はコルネリア・レプシュレーガー、05年の再演。「魔笛」は起承転結のない非物語的でハチャメチャな筋だから、オペラであってもストーリーを追う気になれるんだけど、「コジ・ファン・トゥッテ」などダ・ポンテ三部作はちゃんとしたストーリーがあるからこそ物語的な関心は持ちにくい(音楽は最高だけど……ってヤツ)。
●が、舞台で見ちゃうとやっぱり筋を追ってしまう。「コジ・ファン・トゥッテ」っていうのは、(ダ・ポンテだってのを無視して)現代の視点から見ると、かなり冴えない話である。「女の貞節なんてこんなもんだ(=でも男は違うのさ)」っていう男の一方的で身勝手なジェンダー観が物語の骨子となっているのだが、じゃあテメエはどれほどの男であるかというと、老獪なジジイに手玉に取られちゃうあんまり賢くない軍人であって、これがまた変装するにあたって異国の貴族を選択してしまうあたりが、どうにもカッコ悪い。男なんてホントは一皮剥けばどいつもこいつもこんなようなものだとはしても、それにしても言動の一から十までがとことん冴えない男のそれ。よくいるでしょ、電車の中とかで、パッとしない男が己のこれまたパッとしない恋愛観や女性観を得意げに友達に披瀝してたりする光景。あれがフェッランドとグリエルモ。ダサダサなくせに傲慢。「電車男」の対極に位置している。
●で、彼らに負けずにヤな感じの女がいて、その名はデスピーナ。この女は自分の手は汚さないみたいなところがヤであって、人に放埓を勧めるのであればまずお前が思い切り良く遊べよといいたくなるわけで、ったく小人閑居して不善をなすってヤツである。小ずるいってヤだね、悪党より感じ悪いよ。
●この話で唯一感じがいいのはドン・アルフォンソ。さすが老哲学者である。カモになる若者を見つけると容赦しない。一日で大金を巻きあげる逆結婚詐欺ともいえる鮮やかな手口を披露、しかも若者に知らずにいれば幸せだったかもしれない世の条理をわざわざ教えてあげる。辛辣である。一本筋の通ったイジワルなジジイで、若い頃はブイブイ言わせてたんだろうなあって感じがする。こいつが真のモテ男だってことに、いつかフィオルディリージもドラベッラも気づいて欲しいもんである。
●そんなわけで(どんなわけだ)、「コジ・ファン・トゥッテ」は音楽が最高だから演出はまあ特に珍奇なものでもなけりゃそれで十分だろうと思って見ていたのだ、やっぱり音楽が主役なんだからさ、あんまり演出家ががんばりすぎてるオペラってどうかと思うよね、と。……が、聴衆ってのは無限にわがままなので、オーソドックスで親切な舞台を見ていると、だんだんとそんなにわかりきった長広舌をふるわんでもいいだろうってな気分になってきて、うっかり先日テレビで見たドリス・デリエ演出のベルリン国立歌劇場を思い出してしまう。あれ、可笑しかったよね、冒頭場面が空港でフェッランドとグリエルモがスーツを着たビジネスマンっていう設定になってて、剣の代わりに傘を持ってるのとかホントよくできてる、出征するんじゃなくて異国に赴任するんだろうけどある意味ビジネスも戦争だし、ビジネスマンから変装して60年代ヒッピーになるっていうアイディアも秀逸。あー、いかんいかん、隣の芝がすごく青く見えてるぞ。ペーター・コンヴィチュニー演出の「皇帝ティトの慈悲」@二期会、見ておくか?

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