January 8, 2010

「悲しみを聴く石」(アティーク・ラヒーミー著)

●と、昨日はイエメン戦を見るためにイエメンテレビのお世話になったわけだが、そういえば「アフガニスタン代表」って、ニッポンと試合した記憶、ないっすよね。さすがにアフガニスタンではサッカー協会が機能していないのか……と思ったら、そうでもなくて、2010年大会はこれまでずっと不参加だったワールドカップ予選に挑んだようである(もちろん敗退した)。紛争、内戦と一切無関係なアフガニスタンの話題を耳にする数少ない機会になりうる、サッカーは。
「悲しみを聴く石」●あ、でもこの本もあったか。アフガニスタン生まれでフランスで活動する作家、アティーク・ラヒーミーの「悲しみを聴く石」(白水社)。著者が始めて(母国語ではなく)フランス語で書いた小説で、ゴンクール賞を受賞している。これが変わった物語なんすよね。舞台はおそらくアフガニスタン。主な登場人物は、戦場から植物状態になってもどった横たわる男、そしてその看病をする妻。懸命に夫の世話をして、来る日も来る日もコーランにお祈りしてるんだけど、夫にはまるで快復する様子がない。で、その意識不明の夫に対して、妻はつぶやきはじめる。
●つぶやく……Twitterみたいに? いやいや、もっと怖いことをこの奥さんはつぶやきはじめるんすよ。「悲しみを聴く石」原題の「サンゲ・サブール」というのは、人に言えないような不幸とか苦しみを打ち明けるための石のこと。石はずっとその不幸を聞いて、あるとき粉々に打ち砕ける。すると人は苦しみから解放される、という神話があるんだそうだ。妻はこの夫を「悲しみを聴く石」としてつぶやき続けるわけで、ということはどうなるか……。抑圧された魂vs物言わぬ石。小説というよりは演劇のような舞台作品風で、中篇程度の長さなので一気に読める。戦慄。

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